「打撃で俺にキズを付けるなんて無茶だ」
出典元、ONEの漫画「ワンパンマン」の、いわゆる原作版、61撃目より。S級ヒーロー、超合金クロビカリのセリフ。
クロビカリが怪人・蟲神と戦い、圧勝した後に放ったセリフがこれである。もしこれが、
「打撃で俺にキズを付けるのは無理だ」
なら、格好いいが比較的普通のセリフだっただろう。しかしこれが、
「打撃で俺にキズを付けるなんて無茶だ」
になると、まるで相手を心配している様なニュアンスになり、一気に深みのあるセリフになる。言葉遊びというか、用語のチョイスが非常に面白い。
クロビカリはこの一連の戦いでは、勝ったり負けたり落ち込んだりとS級ヒーローにしては浮き沈みの激しい事になっているが、結局のところ鍛え上げた筋肉は裏切らない。S級17位、ぷりぷりプリズナーが喝を入れるために「エンジェル☆ラッシュ」を食らわせたが、無傷だった。それほど打撃には無敵の強度を誇る肉体である。まあ重火器、刃物、超能力など色々なタイプの攻撃方法がある中、「打撃で」を付けているのには律儀さを感じるが、しかし作中随一の肉体を持っている事は確かであろう。
「ワンパンマン」はWeb上で読める無料のコミックである。ONEが公開していて、初めは実験的だった様で絵のレベルもギリギリだったが、とにかく話が面白かった為、話題になり今でも閲覧者数は群を抜いている。そしてそれに感銘を受けた村田雄介が声を掛け、リメイク的に描き直し、それもWeb上で公開され、アニメ化までされた。世間的にはそれが有名だろう。”画力の高い漫画家と言えば”と聞かれれば必ず名前の挙がる村田雄介が、ある意味”画力はともかくストーリーは面白い”ONEとタッグを組んだ。原作を付ける漫画家は多いが、面白さが確定している原作に、画力に定評のある漫画家が絵を付けるのだから売れて当然である。反則的とも言える。
しかしONEの絵もまた味わい深いのである。特にイケメン系ではないキャラ、豚神やクロビカリなどはいい味を出している。漫画はストーリーであるし近年の漫画家の画力向上もめざましいものがあるが、やはり多少画力が劣っていてもその作家の”個性”が生かされていればそれは非常にマッチして全体としてとても良いまとまりを見せるのである。今現在、ONEが忙し過ぎてストップしている原作の連載だが、再開が待ち遠しいものである。
ガロウ編突入以降、やや元の原作から逸れている村田版ワンパンマンだが、まあその話もネームもONEが作っている様なので別に何の問題もない。願わくばこのクロビカリのセリフだけは、このまま採用して欲しいものである。ハッキリ言って超格好いい。
「打撃で俺にキズを付けるなんて無茶だ」