「弥海砂は第二のキラの容疑でLに取調べを受けたらしい」と報告させ「しかし 誤認逮捕だったとわかり 弥に謝罪 多額の賠償金を払いその事実を揉み消した」そこまで言わせます
出典元、原作:大場つぐみ、漫画:小畑健の漫画「デスノート」45話より、L(える)のセリフ。
「デスノート」、あまりにも有名な作品なので説明も要らないかもしれないが、名前を書くと死ぬ「デスノート」を巡って主人公たちが頭脳戦を繰り広げるクライムサスペンス漫画である。本当に頭のいい人が作ったんだなと思わせるハイレベルな頭脳戦、セリフの多さから来る一話ごとの内容の濃さと、スピーディーなストーリー展開に定評がある。2巻の帯にあったキャッチコピーが、最も分かりやすく作品を現しているだろうか。
非現実世界より来る『死のノート』を巡る少年漫画誌唯一の予測不可能本格サスペンス!!
今回のこのセリフが放たれたのは、いわゆる「ヨツバ編」の一場面だった。主人公の夜神ライト(やがみ らいと)はデスノートを使うキラとなり裁きを行っていたが、Lに捕まってしまった。同じく第二のキラとして動いていた弥海砂(あまね みさ)も捕まった。状況的にはほぼ黒だったが、二人とも”記憶を消す”という手段に出ており、本心から無罪を訴えかける事により、時間をかけて捜査陣の確信を崩していったのである。Lも苦心するが、新しいキラも現れており、二人の拘束は解かずに改めて今いるキラの捜査を続けるという話になった。ライトに至っては24時間、Lと手錠で繋がれたまま捜査に協力するという条件付きである。
ヨツバ編は、ライトが直接Lに追われていない状況のため、読者視点での緊張度はそれまでより落ちるかもしれない。しかし逆にヨツバキラを追う立場になったライトとLが協力するというシチュエーションには、これまでと違った面白さがある。ヨツバキラはそこまで強敵ではないため、天才二人の手にかかってテンポ良く追い詰められていく。しかしここにも高度な駆け引きは存在していて、キラの目星が付いたからにはすぐ捕まえたい夜神総一郎(やがみ そういちろう)たち元警察陣営の思いと、キラの殺人の手段を見付けるまでは泳がせたいLの思惑が入り乱れる。
その状況の中、この45話である。よくこんな展開考え付いたな……、と思わず作者を賞賛したくなる様な手段をLは取る。まず夜神総一郎と捜査方針の違いで一旦決別。そしてライトと共にミサのところに行き、特にそれまで捜査上なにもしていないしどこにも肩入れしていないミサを、自分に協力するよう丸め込んだのである。具体的にはミサのキラへの想いを聞きつつ、愛するライトとどっちがいいかと誘導して捜査への協力にシフトさせていく。ライトは手錠で繋がれているため、どうしてもその場に居てしまうが、そこで「ミサが危険な目に遭うから」と反対させて逆にミサの心に火が点くよう仕向ける。捜査内容としてはミサがLに会っているかもしれないという情報をエサに、ミサをヨツバに潜入させるというものである。しかしその中で発したセリフの一つが以下のものだった。
「弥海砂は第二のキラの容疑でLに取調べを受けたらしい」と報告させ「しかし 誤認逮捕だったとわかり 弥に謝罪 多額の賠償金を払いその事実を揉み消した」そこまで言わせます
ん……。
Lが言っているのである。捕まえた人が捕まえられた人の目の前で、捕まえた件を作り話の様に語っている……。後半は確かに作戦用の作り話だが、前半はまさに自分がやった事そのものである。ヨツバに流す嘘情報風に語っているがそれは事実だし、それをこれだけ他人事の様に言うのは相当”すっとぼけたセリフ”と言わざるを得ないだろう。いやいや、実際それ当たってるから。
これにはミサも思わずひと言出している。
「それマジだしね」