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“バトル・ロワイアル”作者の高見広春「十分稼いだのでもう新作を書くつもりはない」

投稿日:2020年2月1日

「十分稼いだのでもう新作を書くつもりはない」

出典元、ウィキペディア。小説「バトル・ロワイアル」の作者、高見広春の言葉。

高見広春には「バトル・ロワイアル」以外に発表作品はない。……。

のに、このセリフである。作家なら一度は言ってみたいセリフなのではないか。むろん、言えるような作家もたくさんいるが、反発を招くだろうし新作も書けなくなる。この高見広春のセリフは実際に言ったかは不明だが、実際に十分稼いだだろうし、実際に新作を書いていないので、凄まじい信憑性がある。なにしろ小説「バトル・ロワイアル」が出たのは1999年の話なのだから。

この作品の有名なところは、当時さんざん分析されたかと思うが、話題性と、世情と、映画化がある。文学賞に応募した際、「面白いけど内容が酷い。面白いけど」という評価を受け、落選したものの、その話題が漏れ出した。内容は知っている人も多いと思うが、中学生が同級生同士で殺し合いをさせられるというものだ。結局、話題性に目を付けた別の出版社から発売される事になり、映画化も決定する。そこで当時、少年犯罪が世論の注目を集めていた事もあり、放映の賛否を「国会で議論される」という事態になった。が、言ってみればこれは他に類を見ないレベルの超弩級の宣伝である。結果「どんな作品なんだ」とこれ以上ないほど注目され、放映された映画は大ヒットとなった。

しかし映画しか観ていない人がいるなら言いたい。小説の出来が素晴らしい。大げさと言われるかも知れないがこれは、オール10の作品なのではないか。「設定10」、「オリジナリティ10」、これは絶対に間違いない。「キャラクター10」、これは読めば分かるがクラス全員40人は居る登場人物が全員個性を出している、生きた人間になっている。小説家志望はまず登場人物を絞れ、と言われるぐらい多数のキャラを出すのは難しいのである。それを見事に全員書き分け、書き上げている。初めて書く小説でこれは、なかなか出来る事ではない。「ストーリー10」、このどう転がるか分からない、しかし必ず終わりの来る絶望的展開を、現在の生き残り人数をカウントダウンしながら辿って行く、こんなの読み進める手が止まるはずがない。「文章10」、独特の感性、少しメタ要素のある語り口、この人にしか書けないであろう”この人の他の作品も読んでみたい”を思わせる独創的でノっている文章。

設定とオリジナリティについては、この作品の発表以降、ネット上に二次創作が溢れかえった事実が証明している。殺し合いは「プログラム」と言うが、「プログラム」を別の作品のキャラたちで行ったら、という二次創作が流行り、テンプレートも出来ていた。”この設定面白すぎて本編だけじゃもったいない”、という事である。とんでもない話だ。最近の漫画にデスゲームものがやたら多いのは、子どもの頃に流行ったこの「バトル・ロワイアル」の影響を受けた世代が創作する側になって来たからという説もあり、影響力の大きさに震える話である。そして小説作品だけでこのレベルである。これに国会まで巻き込んだ映画化、それの大ヒット、謎の映画化2、あと一応漫画化もあり、そりゃあはた目に見ても、十分稼いだだろう。

ちなみに「バトルロイヤル」という用語はプロレスなどで使われる試合形式であり、3人以上が一斉にバトルするルール形態である。作品名と意味としては同じだが、「バトル・ロワイアル」は「バトル」を英語読みで「Battle」、後半はフランス語で「Royale」、「ロワイアル」としている。日本で普通にバトルロイヤル形式の話をすれば「バトルロイヤル」でいいのだが、たまに普通にパロディでもなく「バトル・ロワイアル」と使われている事があり、この作品の影響力の大きさを思い知らされる。

「十分稼いだのでもう新作を書くつもりはない」そうだが、そろそろ21年経つし、金は大丈夫なのだろうか。ウィキペディアからこのセリフが消されているので、なにか変化があったのかもしれないと邪推してしまう。「バトル・ロワイアル」を出す前は新聞社に勤めていたそうで、安定した貯金を持ってまた普通に勤め人をしていたなら、……嫌だなあ。

本ページの情報は2023年3月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。

-著名人

執筆者:


  1. 中森麻由香 より:

    前々からバトル・ロワイアルについて感じていたことを言葉にして下さっていたので、コメントさせて頂こうと思いました。
    バトル・ロワイアル、本当に名作ですよね!
    デス・ゲーム小説は沢山ありますが、バトル・ロワイアルとは、正直比べ物にならないな、と思ってしまいます。
    映画は見たことないのですが、やっぱり彼らの生きてきたバックグラウンドは伝えきれないんですね。ただ当時の栗山千明さんが好きなのでいつかは見たいなと思います。
    「十分稼いだのでもう新作を書くつもりはない」と本当におっしゃっていたとしたら結構ショックですね…。ただ、幻冬舎文庫の「バトル・ロワイアル(下)」のあとがきで、書いているから必ず戻ってくる、とされていたのでその可能性に期待したいですね。
    周りにバトル・ロワイアルを好きな人がいなくて(そもそも知っている人すらいなくて)、誰かの感想を聞きたいと思っていたんです。比較的最近の記事を見つけたのでコメントしようと思いました。長々と失礼しました。

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