「あいつの場合に限って常に最悪のケースを想定しろ 奴は必ずその少し斜め上を行く!!」
出典元、冨樫義博の漫画「レベルE」1巻より。ドグラ星王立護衛軍隊、クラフト隊長のセリフ。
「レベルE」は冨樫義博が、「幽☆遊☆白書」の後に発表した作品である。全3巻。週刊少年ジャンプにしては珍しく、月一連載というスタイルで開始され、ちゃんと守られて完結した。知名度に火が点いたのはどこかの新聞でベタ褒め記事が出たからだが、読んでいた人ならば別に解説されなくても「おもしれー」だっただろう。根幹となるものは地球に来た宇宙人、というところだが、それをとりまく環境、登場人物のキャラ立ちの上手さ、ギャグの切れ味、ストーリー展開の妙、とにかく全てが職人技とも言える出来で、別に「HUNTER×HUNTER」の事を言いたい訳ではないが、やはり才能のある人に時間をたっぷり与えて話を練らせればとんでもないものを仕上げて来る、を体現した作品である。時間の部分は作画にも言える事で、アシスタントなしで描き上げたらしい。
「あいつの場合に限って常に最悪のケースを想定しろ 奴は必ずその少し斜め上を行く!!」
そしてその中でもひと際有名なセリフがこれである。話は基本的にバカ王子が作ったとんでもない状況に雪隆と王子の護衛たち、その他もろもろが振り回される展開だが、振り回され歴10年のクラフト隊長の言葉には重みがある。そしてこの表現である。
「奴は必ずその少し斜め上を行く!!」
まさに名言が生まれた瞬間である。「斜め上」は現在、色々な場所で使われている表現である。「レベルE」が初出であるかどうかは諸説ある様だが、少なくともジャンプで連載され知名度抜群の中使われた事により、これが広まる起点となったのは確かだろう。
非常に秀逸な表現である。「この展開は想像の斜め上だわ」、「あいつの発言はいつも斜め上だなぁ」などと2017年の現在でも普通に使われている。まず「斜め上」という表現が面白いし、説明なしで伝わるところも凄い。これが普通の表現なら「想像の上を行く」、「予想よりずれている」などになってしまい、意味は伝わるがインパクトは弱い。しかし「斜め上」なら、意味が伝わりつつインパクトがありつつクスリと来る、たったひと言でそれだけの要素が含まれるのである。表現の発明と言えるのではないか。凄い凄いは散々言われている事だが、実際本当に凄い。
変わった人を表現する際、あえて使いたくなる日本語である。
本ページの情報は2023年3月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。