「そんな事よりサメの話しようぜ!」
出典元、いつかのネット、誰かの書き込みより。この記事の内容についてはやや曖昧で、モコッとしている。
ネット上でたまに使われるフレーズだが、なぜサメなのかと言うと元ネタと思われるものが存在していて、古谷実の漫画「行け!稲中卓球部」にて
「サメの話しようぜ」
というセリフがあり、それの派生と思われる。「稲中」では、仲間内で盛り上がっている話題に着いていけない子が、強引に別の話題をねじ込もうとした時に使われている。もちろん別の話で盛り上がっていた人たちからは、なんだよいきなりといった反応をされ、白い目で見られている。こういう発言は子どもの頃やりがちで、空気の読めない自分勝手な行為と言っていいだろう。
しかしこれが「他の話しようぜ!」ではなく「サメの話しようぜ!」なのは、それが独特の味を出しているからである。なぜなら急にサメって言われても困るから。サメという生き物は世界に500以上もの種類が存在していて、大体こんな生き物ですというのが言いにくい。そもそもがサメは魚類なのに、魚らしく卵を産む種類と哺乳類の様に赤ちゃんを産むいわゆる胎生が存在するらしく、”サメはイルカと同じで”とか”サメは卵を産まない”だとかが言えない存在なのである。つまりサメという言葉の範囲が広い。また、大きさも最小20センチから最大12メートルまでと幅広く、南極の海から赤道の海、深海までどこにでも生息しているらしい。まあどこにでもと言うか、種類別に生息域が違うだけであってどこでも生きていける生物と言う訳ではないのだが。そしてサメと言われると映画の「JAWS(ジョーズ)」を連想する人も多いと思うが、なんとなく感じる”鮫は英語でジョーズ”感は間違っていて、普通に”シャーク”である。そう言われるとそうだった、と腑に落ちる程度には日本人にも知られている英語だろう。ジョーズは”顎(あご)”である。が、面倒な事に映画「ジョーズ」がヒットし過ぎてしまったせいで、向こうでは「JAWS」ももはやサメの意味で使われているらしい。これだから日本人は英語が……と言いそうになるところにアメリカでも映画の影響で単語の持つ意味が変わっていたとは、事実は映画より奇なり。「JAWS」の影響で”サメって口で出来てそう、怖い”感もなかなかのものだが、サメの中で人を襲う種類はほんの一部であり、それも敢えて人を襲うというよりはサーフボードに乗っている人間をアザラシとかと勘違いして襲ってしまっているだけらしい。サメが悪いというより人間が悪い。そしてその怖いイメージを映画まで作って広めた上に大ヒットさせてしまうのだから、スピルバーグもなかなかのワルである。悪いのは大体あの潜水艦みたいな尾ビレと、デーデ、デーデという曲のせいだろう。「JAWS」を観た日本人の感想は、「サメって怖い」、あと「アメリカ人ってホントすぐパニックになるよな」だと思われる。しかしそんなサメの話はどうでもいい。
どれだけサメが興味深くても、「サメの話しようぜ!」と言われて普通の人がいきなり盛り上がれるものでもないのである。日本人に身近なイヌやネコとは違うのだから。つまりこのフレーズを使うシーンにおいては、サメという動物のチョイスが肝だと言える。サメというチョイスが重要で、かつ、サメの話題はどうでもいい。……??
「そんな事よりサメの話しようぜ!」
主にネット上で使われるが、つまりこれは話題をぶった切るためのひと言なのである。本当にサメの話がしたい訳ではない。それまで特定の話題で盛り上がっていた人たちに、まあ落ち着けと、熱くなり過ぎですよと伝えるために使われる。へいへい、あんたがた、ちょっと口が悪すぎやしませんかい――?
人というものは結構周りの環境に影響されるもので、人を悪く言う人がたくさんいる環境に長くいると自分も染まっていってしまう。たまに会う人に「なんか言う事が攻撃的になってない……?」と言われたら危険信号である。しばらくぶりの人がすぐ気付けるレベルの変化を、自分では全く気付けていないところにこの怖さがある。いつも陰口ばかり言う人たちの集まりの中にいたら、元々そんな事を言わない人もいつの間にか言う様になっていたりする。周りからの影響というものはそれだけ大きいのである。そしてそれはもちろん人付き合いの中でもあるが、そういった影響はネットからも、テレビからもあるのである……。あなたは日に何時間、人の事を悪く言うテレビ番組を観ていますか?
ここで川崎(@_rotaren_)氏のツイートを引用する。
人の悪口を言うのはやめようよ
サメの悪口を言おうよサメは人を噛んでくることもあるし最悪
人の悪口を言うのはやめようよ
サメの悪口を言おうよサメは人を噛んでくることもあるし最悪
— 川崎 (@_rotaren_) May 24, 2020
ホント、サメは最悪である。
……。
大丈夫? イライラが感染してない? 最近すぐ人の悪口を言ってない?
なぜかサメであり、そこにこそサメである。「やめろよ」と止めるのではなく、「どうしたの?」と問い掛けるのでもなく、サ メ の せ い に す る。これはもしかしたら、特定条件下の人に対してクリティカルな威力を発揮する、会話の高等テクニックなのかもしれない。
本ページの情報は2023年3月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。