「すいませんそこ右に家が」
出典元、「Linked Horizon」(リンクトホライズン)の曲「紅蓮の弓矢」より、歌詞の一部。作詞、Revo。
「紅蓮の弓矢」(ぐれんのゆみや)は、テレビアニメ「進撃の巨人」のオープニングテーマである。いわゆるアニメ一期の前期オープニングテーマ。「進撃の巨人」の爆発的ヒットとアニメの出来の良さ、という前提に加えて曲の良さとオープニングアニメーションの格好良さから、当時大きなブームになった。ストレートな方向では「Linked Horizon」は紅白歌合戦に呼ばれたし、変化球的な意味合いではニコニコ動画にパロディ動画があふれた。
その「紅蓮の弓矢」の出だし、なにを言っているのか分からない冒頭のフレーズがこれである。
「すいませんそこ右に家が」
いやいやいや……。タクシーかな?
歌詞が聴き取りにくいというのはよくある話である。ちょっと違和感があるのは、これは日本の歌でよく使われる英語ではなくドイツ語だからなのだが、だからと言って分からなければ歌詞カードを見ればいいだろう。しかし当時、アニメの放送からCDの発売までの間でもかなりブームは熱くなっていたので、ファンは正式な歌詞を知りたくてもどうにもならなかった。というか頑張って聞き取るしかなかった。ドイツ語を。
ようやく発売されて判明した歌詞は以下のものだった。
Seid ihr das Essen?
Nein, wir sind der Jager!
!?
ドイツ語なので……。
せいどいひぃ、だす、えっせん、あ、きつい。だからー。これを日本語変換してしまうとこうなるのである。
「すいませんそこ右に家が」
少し舌足らずで滑舌を悪くすると上手い具合にそれっぽく聞こえてくれる。
「スィアセッソニ、ウィーシデイェーガー」
なのでつまりこれが歌詞でいいのである。この日本語訳は誰が考え付いたのか、どこかの掲示板に書かれていたが、周りからかなり「いいねそれ」のリアクションをもらっていた。皆、実際に口に出してみて確認したのだろう。その光景を思い浮かべると笑えるが。しかし正式な歌詞が分からないというのはカラオケで歌う時に困るぐらいだが、「紅蓮の弓矢」はそのカラオケに歌詞を”表示させない”曲だったので、どこのカラオケに行っても問題は解決しなかった。ちなみにドイツ語歌詞が判明した事で意味も判明した。翻訳に放り込むとこうなる。
あなたは食べ物ですか?
いいえ、私たちは狩人です!
なるほど。主人公「エレン・イェーガー」の苗字「イェーガー」の意味がドイツ語で「狩人」だった事もあり、上手く掛かった歌詞になっている。「イェーガー」はサビでも使われており、その熱さは最高潮を迎える。しかしCDが発売されるまでは、冒頭だけでなくところどころの歌詞も微妙に不明だったので、「紅蓮の弓矢」は大ヒットした曲にしては珍しい展開を辿った曲だったとも言える。最たるものは二番だろうか。
アニメのオープニングでは当然、一番しか流れていないので二番の歌詞は不明だった。謎の多い原作漫画の作品内容と曲作りの裏話から、二番の歌詞に作品内の大きなネタバレが含まれているのではないかと噂になったりした。結果的にそういうものはなかったのだが、そんな事より二番で曲調がガラリと変わってしまう方に視聴者は度肝を抜かれた。一番とは別の曲かと思うぐらい変わるのである。転調、でいいのだろうか。最終的には一番と同じサビの曲調に戻って来るのだが、それまでは一つの曲としてはやたらと長い間奏が挟まれ、大勢のファンが「???」という状態になった。それはそういうものとして非常にカッコイイのだが、普段から一般的な造りの曲を聞いていると、戸惑ってしまうだろう。
しかし逆に言えば、この曲は誰が作っているのかという話である。「Linked Horizon」とは「Sound Horizon」(サウンドホライズン)がタイアップをする時に使う名前で、つまり「Sound Horizon」なのである。「Sound Horizon」は普段から通常の曲ではなく、「物語音楽」と呼ばれる曲を作っている。簡単に言えば「お芝居の様な、語りの入る曲」である。それが今回たまたま、「進撃の巨人」のためにちょっと一般向けの曲を書いただけであって、彼を知らない人から「なんだこれは」と言われても、知っている人からすれば「そういう人なんで」と言うしかない。
とあるニュース記事の一文が分かりやすく、面白かったので引用しておく。
ファンは批判に対して「いつものRevo曲」「これはまだ一般向け」と冷静な反応を見せている。
本ページの情報は2023年3月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。