「君もイヤな奴がいなくなるより、イヤな奴がすごくイイ奴になって友達になれた方がいいだろ!」
出典元、森田まさのりの漫画「ルーキーズ」より。主人公、川藤幸一のセリフ。
前向きな名言の多い川藤幸一というキャラだが、このセリフも大概である。前向き過ぎというか、性善説過ぎというか、漫画だな! というか……。この漫画は不良が野球を本気になってやって行き、それぞれの挫折がありつつも監督であり先生である川藤に救われ、野球に強くなって甲子園まで行くという話である。とにかく主人公、川藤の存在とカリスマ性が半端ではない。
なので、つまり「イヤな奴」とは不良の事を言っている。不良にイヤな目に遭わされた人にそう言っている。「いや、いなくなって欲しい」と言われても仕方のない状況だが、この回答によってその不良の処分が決まってしまう大事な場面、川藤はこんな事を言ってくるのだ。熱い、熱すぎるよ先生……。結局その生徒は「イイ奴になって友達になれた方」を期待して、許す選択をするのである。川藤の圧に負けた部分もあるだろうが、それだけ熱いのが川藤なのだ。
しかし漫画だろう。現実世界で不良がイイ奴になってクラスの人気者になるなんてまずない。漫画やドラマだからこそ生きる設定というか、現実ではないからこそ漫画やドラマで見せてもらいたいというか、そういう願望があるからこそ、よくあるシチュエーションなのだろう。現実以外で。
「ルーキーズ」はドラマ化で一時期一斉を風靡した。川藤役の佐藤隆太もハマリ役だったし、ドラマのままのユニフォーム姿でチーム全員がテレビに出演している姿まで良く見かけたので、当時のブームは相当なものだったのだろう。ただ、週刊少年ジャンプの漫画なので元から知名度も人気も高かった。
しかしこの漫画は川藤である。川藤がいる。格闘技をやっていたので腕っ節もあるのだが、それはほぼ使わずに言葉で、生徒というか不良たちを動かし、更生させてゆく。国語教師というのもあり、川藤で検索すると名言がたくさん出てくるぐらいたくさんの名言を放っている。クサいセリフを大真面目に言ってくれるものだから、聞く側も恥ずかしいのだが、その言葉が本心から出ているのが分かるので結局伝わってしまうのである。
しかしまたこの不良たちがやんややんや、からかい合いながら、ガラ悪く野球をしつつも要所要所では実力者がいたりスピードスターがいたり、すごい才能の持ち主がいたり、そして一番マジメというか地味な奴がキャプテンをやらされ、最後は川藤の言葉を信じてそいつが決めたりと、まあ良く出来た漫画である。
波乱から始まり、努力あり、励ましあり、仲間同士の友情あり、そして勝利あり。まさに名作である。