「それはひょっとしてギャグで言ってるのか!?」
出典元、野中英次の漫画「魁!!クロマティ高校」より。神山と林田の心のツッコミ。
「魁!!クロマティ高校」、男塾みたいなタイトルの漫画だが、週刊少年マガジンで連載されていたシュール系ギャグ漫画である。アニメ化も実写映画化もされているので結構な人気を誇っていたのだろう。あまりないタイプのギャグ漫画ではあったかもしれない。劇画タッチの絵と、ノリが独特で、センスが突き抜けている。
クロマティ高校のクロマティはもちろんプロ野球元巨人軍のウォーレン・クロマティ氏から取られているのだが、おそらくなんとなく付けたこの名前に、映画化の段になってそのクロマティ氏から訴えられかけるというトラブルがあった。ギャグも不良もクロマティとは全く関係ないので風評被害と言えば風評被害なのだが、そこはギャグなんだから笑って許してくれよというのも当事者の気持ちだっただろう。結局映画ではクロマティ本人とは無関係である旨を字幕表示し、クロマティ氏は許してくれたらしい。なお、登場する高校の名前にバース高校、デストラーデ工業高校、ブーマー高校などが登場するため、クロマティが野球とは関係ないただの名前だと言い張るとしたらそれには無理がある状況だった。
ストーリーというか内容としては、主人公の神山が、不良ではないのに不良たちの集うクロマティ高校に入学してしまうところから始まる。そこで不良たちにビビリながら学校生活を送ると思いきや、そこにいる個性豊かな不良たちに振り回される事になる。登場するのが一筋縄では行かないキャラばかりで、それがこの作品の特徴だろう。不良漫画ではあるのでケンカもあるにはあるのだが、どちらかと言うと変人色が強いため神山のツッコミが冴え渡る。最終的に神山は、ビビリながらの生活どころか周りから一目置かれる存在になって、不良学園生活を送る事になる。
そしてクロマティ高校の個性豊かな登場人物の中でもとびきり突き抜けたキャラが、メカ沢だろう。メカ沢はロボット……である。かなり雑な造りの。しかし「なぜロボットが高校に!?」のツッコミを許さないというか突っ込むタイミングを逃し続けている間に見えてくるロボットなくせに硬派で男らしいキャラ……。機械が得意そうだと遠回しに言うクラスメイトに対し、機械に頼りすぎるのもよくないと語るメカ沢。心が通い合わなきゃむなしいんだよ――。
「このままじゃオレたち・・・・ 機械に支配されちまうぜ!!」
……。
もろに、ロボットのメカ沢がこれを言っているのである。これに対するツッコミがすなわち、これだった。
「それはひょっとしてギャグで言ってるのか!?」
しかしさすがに声には出せなかったので、二人の叫びは心の声となった。このシュール過ぎるツッコミは「クロマティ高校」を代表するシーンとなり、単独の絵としても威力が高い事から現在でも使われるツッコミ画像となっている。当事者が自分の事をものすごく棚に上げて、すっとぼけた事を言っている時にジャストフィットする、芸術的なツッコミである。使用例を想定するなら、例えば不倫した有名人に対して石田純一が苦言を述べたりしたら、それを聞いた人の脳内にこのツッコミは吹き荒れるだろう。チャゲ&アスカのアスカが、アスカが起こした騒動により苦境に立たされているチャゲに向けて頑張れと言っていた時にも、吹き荒れたと思われる。
「クロマティ高校」は名作だが、このシーン一つだけ見ても歴史に名を残す存在になったと言えるかも知れない。なお、使う状況のひじょーに酷似した類義語に、お前が言うな、「おまいう」がある。