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漫画

“アクタージュ”デスアイランド編「彼女が天使なら君は…えーとブルドーザー?」夜凪と千世子の対比

投稿日:2020年3月30日

「彼女が天使なら君は―― …えーとブルドーザー?」

出典元、原作:マツキタツヤ、漫画:宇佐崎しろの漫画「アクタージュ」2巻より。手塚由紀治(てづか ゆきじ)のセリフ。

「アクタージュ」は、週刊少年ジャンプで連載されている役者を題材とした漫画である。こういう比較的珍しい題材の漫画が連載を続けているのはなかなか凄い事である。女主人公ものも少年ジャンプでは珍しい。しかし先の読めないストーリー展開と魅力的なキャラクターにより、人気を博している。ひとえに原作のマツキタツヤ氏、作画の宇佐崎しろ氏の力量によるものだろう。……ふたえに?

このセリフはいわゆる「デスアイランド編」で放たれた。役者であり主人公の夜凪景(よなぎ けい)は映画「デスアイランド」のオーディションを受ける。500人のライバルの中から、12人という狭き門を突破するが、そこには監督である手塚の思惑も含まれていた。手塚は本来、手堅い配役とルーチンワーク化した演出で、芸能事務所スターズの望む安定した作品を撮る監督だった。今回も主役はスターズの”天使”こと百城千世子(ももしろ ちよこ)で、配役の半分もスターズの役者で固めている。しかしそこに今回、偶然オーディションで発見した、異様な演技をする夜凪を放り込んだのである。手塚の思惑は不明なまま、撮影は進んで行った。

しかし映画は、監督のものであると同時に、主演の演技次第というものでもある。手塚も「映画の興行的成功は主演にかかっている」と言っている。そして実際、主演の千世子が撮影を引っ張って行く展開となる。社長からも「”あの子”さえ主演に据えれば間違いない」と太鼓判を押されている千世子は、夜凪らが「仮面の演技」と表現する完璧に作られた芝居で、圧倒的な演技力と撮影の完成度を見せつける。対して夜凪が得意とするのは迫真の演技「心の芝居」である。読者的にも対立構造が分かりやすく、夜凪も千世子を好きになれないでいた。しかし最後に夜凪は千世子をかばうシーンがあり、このままでは演じられないと手塚に言う。

そこで手塚の本心がついに明らかになる。手塚は千世子の責任の重大さ、しかし自分はそれを見飽きた、千世子の仮面をぶっ壊して欲しいと夜凪に頼むのである。が、その例えがこれである。

「百城千世子は ああも強く美しい ”天使”になったんだ」

「彼女が天使なら君は―― …えーとブルドーザー?」

きゅぴーん

ガガガガガガ

この落差の激しさよ。

これには夜凪もポカーンである。二人とも美少女なだけに、まあ酷い差である。ここでありきたりな対義語を持って来るなら例えば「悪魔」だったり、「堕天使」だったりするところだが、まさかの重機である。しかしこれで監督の思惑もはっきりし、ここからはブルドーザー夜凪が、クライマックスへ向け発進するのである。映画「デスアイランド」は最終的に波乱に次ぐ波乱で大変な事になりつつも、なんとかクランクアップを迎える。結果を見れば夜凪はなんとか演じ切ってさらに一矢報い、千世子は貫禄を維持したまま夜凪を認める事になり、手塚は見たかった千世子の仮面の下の素顔を一瞬だけ撮れた事になる。やっている事がお芝居なので”そもそも勝敗じゃない”、それゆえに先の読めないストーリー展開。これがアクタージュの大きな魅力である。

ちなみにこれは余談になるが、普通の少女漫画だったら夜凪と千世子のビジュアルは逆かなと思われる。主人公の夜凪が黒髪ロング、キリッとした顔立ちの背の高い美少女なのに対し、ライバルの千世子はふんわり茶髪のショートカット、背の低いかわいい系美少女である。この見た目で、登場の段階から千世子が強キャラ感を出しまくっていて、夜凪をビビらせる、かつ、世間には”天使”と呼ばれかわいいかわいいと言われている、そしてそれを読者も違和感なく受け止めている。これは本当に凄い事であるし、構造自体が面白い。ひとえに、これは本当にひとえに、作画の宇佐崎しろ氏の絵力(えぢから)の成せる技、もっと具体的に言えば、千世子の目力(めぢから)の強さに依るものだと言えるだろう。

-漫画

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