言の葉の魔力

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漫画

「彼女が天使なら君は―― …えーとブルドーザー?」

投稿日:2019年4月2日


「彼女が天使なら君は―― …えーとブルドーザー?」

出典元、原作:マツキタツヤ、漫画:宇佐崎しろの漫画「アクタージュ act-age」2巻より。映画「デスアイランド」の監督、手塚のセリフ。

「アクタージュ」のいわゆる「デスアイランド編」を象徴するシーン、セリフである。象徴と言うか、これまでいまいち掴めなかった監督の思惑が見えて来た、話の進む方向性が定まったシーンと言うか。

役者であり主人公の夜凪景(よなぎ けい)は映画「デスアイランド」のオーディションを受ける。500人のライバルの中から、12人という狭き門を突破するが、そこにはオーディションを選考した、監督である手塚の思惑も含まれていた。手塚は本来、手堅い配役とルーチンワーク化した演出で、芸能事務所スターズの安定した作品を撮る監督だった。しかしそこに今回、オーディションで見付けた、共演者を変えてゆく芝居をする”異物”であるところの夜凪を放り込んだ。手堅さとは逆の、これまでとは違う変化を期待していたのだ。

しかし映画は、監督のものであると同時に、主演の演技次第というものでもある。手塚も「映画の興行的成功は主演にかかっている」と言っている。そして実際、「スターズの天使」こと、主演の百城千世子(ももしろ ちよこ)が撮影を引っ張って行く展開となる。社長からも「”あの子”さえ主演に据えれば間違いない」と太鼓判を押されている千世子は、夜凪らが「仮面の演技」と表現する完璧に作られた芝居で、圧倒的な演技力と撮影の完成度を見せつける。しかし。この「仮面の芝居」こそが手塚の見飽きていたものだったのである。

「心の芝居」をする夜凪は、千世子を好きになれないでいて、監督に千世子をかばうシーンを演じられないかもしれないと言って来る。そこで手塚は千世子の責任の重大さ、しかし自分はそれを見飽きた、千世子の仮面をぶっ壊して欲しいと夜凪に頼むのである。が、その例えがこれである。

「百城千世子は ああも強く美しい ”天使”になったんだ」

「彼女が天使なら君は―― …えーとブルドーザー?」

きゅぴーん

ガガガガガガ

この落差の激しさよ。

これには夜凪もポカーンである。二人とも美少女なだけに、まあ酷い差である。ここでありきたりな対義語を持って来るなら例えば「悪魔」だったり、「堕天使」だったりするところだが、まさかの重機である。しかしこれで監督の思惑もはっきりし、ここから「デスアイランド編」はブルドーザー夜凪が、クライマックスへ向け発進するのである。

ちなみにこれは余談になるが、二人のビジュアルについて。普通の少女マンガだったら夜凪と千世子は逆かなと思う。主人公の夜凪が黒髪ロング、キリッとした顔立ちの背の高い美少女なのに対し、ライバルの千世子はふんわり茶髪のショートカット、かわいい系美少女である。背も低い。この見た目で、登場の段階から千世子が強キャラ感を出しまくっていて、夜凪をビビらせる、かつ、世間には”天使”と呼ばれかわいいかわいいと言われている、そしてそれを読者も違和感なく受け止めている。これは本当に凄い事であるし、構造自体が面白い。ひとえに、これは本当にひとえに、作画の宇佐崎しろ氏の絵力(えぢから)の成せる技、もっと具体的に言えば、千世子の目力(めぢから)の強さに依るものだと言えるだろう。

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