「なんだネコか……」
出典元、映画などの演出に使われる、よくあるセリフ。お約束シーン。
分かりやすいところではスパイ映画で、隠れてコソコソ行動するシーンに好んで使われる。たぶん好んで使われている。情報を得るべく隠密で敵地に侵入、内部情報を話しているところを見付けて聞き耳を立てる……。が、そうです、枝を踏んでしまうんですね。パキッ。しまった!
「誰だっ!?」
からの、
「にゃーん」(ネコの声真似)
「……なんだネコか」
というくだりで、ピンチを凌ぐのである。うーん、ここまでテンプレート通りだとギャグ要素が50%を超えていて、もはや様式美だろう。期待を裏切らない方が期待を裏切ってしまう。しかしもう少し真面目さのあるシーンでも使われる。こちらはホラー映画である。テンプレート通りというのは変わらないが、用途としては怖さの増幅としての小道具として使われるらしい。オバケでもゾンビでもいいが、なにか怖いものに追われている登場人物。もちろんシーンは暗い。屋敷の中、逃げてきたその人物は、一つの部屋に隠れて息を潜める。謎のクリーチャーは追って来ない。いや去って行ったか? 固唾を飲んで緊迫するシーン。……。ガタッ!
(ひぃっ!)
からの、
「にゃーん」
ネコの姿が見える。
「……なんだネコか」
ホッとしたその瞬間、突然クリーチャーが現れて
「ぎゃーーーっ!」
そのモブ1は襲われるのである。一旦ネコで安心したところをやっぱりダメでした~っ、というこの展開が怖さを増幅するらしい。ただやはりこれも使い古されたお約束な事に変わりはなく、視聴者としてもネコが出て来て安心している心の中に、でもダメなんだろうな、という気持ちは持ってしまう。どうせこういうのは物語の序盤であり、主要人物ではないモブが、こういう恐ろしい存在がいるんですよという視聴者への宣言のために襲われるシーンで使われる。殺人鬼なら特に必要はないが、ゾンビなどの超常の場合は”この作品にはこういうものが存在するんですよ”という宣言が、必要だからである。
ではなぜそこでネコなのか、という疑問も生まれるが、実はこれまでの話で二つのパターンが存在している。ネコが登場するパターンと、しないパターンである。つまりネコが実際に登場するならいいのだが、登場しないなら声真似が必要だからである。これがネズミやカラスだとなかなか声真似が難しいし、説得力のあるシーンが作りにくい。ネコならば、まあ、「にゃーん」の真似は誰でもした事があるだろうし、「にゃーん」でなんの動物だろう? という事にはならないからだろう。「シーーーッ!」という鳴き声だったらちょっと確認したくなる。……まあ、屋内でも屋外でも、意外な場所に放し飼いになっていてもおかしくない動物の筆頭がネコなので、使いやすいのだろう。
テンプレートの最たる展開だと敵兵士に見付からない様に行動するシーンでの「なんだネコか」だが、しかしここに、2018年、強烈なツッコミが入る。さめ(@SAMEX_1u2y)氏のツイートがそれである。
映画の「なんだ猫か……」って放置する兵士って信じられんよな
周り誰もおらんかったら「あら~~~~ ネコチャンどうちたんでちゅか~~~~ 迷子でちゅかダメでちゅよ~~~~おいでおいで~~~~~ ………………敵襲だーーーーーーーーー!!!!!!」ってなるでしょ
映画の「なんだ猫か……」って放置する兵士って信じられんよな
周り誰もおらんかったら「あら〜〜〜〜♥♥♥ネコチャンどうちたんでちゅか〜〜〜〜♥♥♥♥♥迷子でちゅかダメでちゅよ〜〜〜〜おいでおいで〜〜〜〜〜♥♥♥♥♥♥♥………………敵襲だーーーーーーーーー!!!!!!」ってなるでしょ— さめ (@SAMEX_1u2y) December 18, 2018
お、おう……。
しかしこのツイートは、余りにも大きな共感が得られたせいで、猛烈にバズったのである。