「言葉は無粋!! 押し通れ!!」
出典元、三浦建太郎の漫画「ベルセルク」より。不死のゾッドのセリフ。
理屈じゃないがとにかく格好いいセリフというのはあるものである。もちろん荒々しく勢いだけで発せられるものもあるのだが、理屈じゃないセリフの中でもそのキャラクターの生き様も含めて「こいつが言うなら納得せざるを得ない凄いセリフ」というものがある。その一つがゾッドのこのセリフである。
「言葉は無粋!! 押し通れ!!」
理屈じゃないというか、理屈どころじゃない。
主人公のガッツが、復活したグリフィスに斬りかかろうとしたところに割り込んで来たゾッド、というシーンである。ガッツとグリフィスはかつて共に戦った仲間である。しかしグリフィスの裏切りにより仲間はほとんど殺され、ガッツはグリフィスを許す事が出来ない。目の前に現れたグリフィスに斬りかかるが、そこに現れたのはかつて二人が敵として戦ったゾッドだから驚きである。ゾッドはまさに武の塊、戦場に生きる伝説の傭兵である。ガッツはそこをどけとゾッドに言うのだが、ゾッドはこのセリフを言いガッツに立ち塞がる。「言葉は無粋」に反論出来る言葉が浮かばない。なぜなら無粋だから。ガッツはグリフィスに辿り着くために、ゾッドに対して言葉ではなく剣で応えるのである。
こういうよく考えると無茶なセリフは誰が言っても映えるというものではない。実際、この場面でゾッドが正直に話すとしたら、なぜ割り込んだかと言えばグリフィスに屈して配下になったからだし、ガッツと戦いたいのは久々に会ってどれだけ強くなったかを確かめたかったからだろう。しかしそれをゾッドが言葉にすると
「言葉は無粋!! 押し通れ!!」
になるのだから堪らない。
これはまさにゾッドだからこそ使えるセリフなのだろう。ストーリーの中でも大きな山場であり、再開と壮絶な斬り合い、それに負けない、キャラたちの掛け合いだった。ベルセルクの中でも屈指の名シーンと言えるだろう。
しかしここからはやや無粋かもしれないが、落ち着いて振り返ってみると「言葉は無粋」と言いながらゾッドはガッツとそれなりに会話をしている。戦いはアクシデントがあり、グリフィスが切り上げたので中断してしまうが、その中のごたごたでなし崩し的にガッツとグリフィスは言いたい事を言い合っている。見せ場としてキャラを生かし、相手に妥協している様に見せずに、エピソードとしては言っておかないといけない事はしっかり言わせているのである。この辺りの話作りの上手さは、職人芸とも言えるだろう。……しかしそこまで考えないで読んだ方が気持ちいいので、ここはストレートに見て楽しめばいいはずである。やはり言葉は、無粋だった。
本ページの情報は2023年3月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。