「ラスボス」
出典元、RPGなどのゲームにおいて、最後に戦うボスの事。転じて、小林幸子の異名。
転じていない……!
「または、小林幸子の異名」が正しいか。それはそれで、なんだか凄いが……。「ラスボス」は「ラスト・ボス」の略である。ゲーマーが”さも当たり前の様に”使っている用語だが、ゲームに馴染みのない人には説明なしでは通じないネーミングかもしれない。うーん、しかしラノベ辺りでも使われていそうだが。あ、「ラノベ」は「ライトノベル」の略である。が、しかし、演歌歌手の小林幸子を知らない人となるとほとんどいないだろう。もし名前でピンと来なかったとしても、顔を見れば「ああ、この人ね」となる人が多いだろうし、それでも知らなかったとして「紅白歌合戦で巨大な衣装で歌ってた人」と言えば認知度の高さは相当なものになる。
さて、その有名な演歌歌手であるところの小林幸子がここしばらく、不思議な事になっている。紅白歌合戦に33回も連続出場してその経歴はまさにレジェンドといった存在になっていたのだが、2012年に諸事情でプライベートがごたごたし、その影響で紅白に落選して連続出場記録が途絶えてしまった。……そこまでは有名人のよくある挫折話なのだが、小林幸子は転んでもただでは起きない。しばらくテレビに出にくかったのか、それならネットだとばかりに、まずニコニコ動画の年末特番に出演して、紅白の裏で生歌を披露したのである。
ニコニコ動画としてもいきなり演歌界の大御所が参入してきてビックリしたかと思うが、実は少し前からニコニコ動画に歌を投稿してユーザーを驚かせていたりして、その予兆はあったのかもしれない。そこで歌うのがニコニコユーザーの大好きなボカロソングだったりして、「なんだよ急にすり寄って来やがって」と言いたい気持ちになった人もいただろうが、それを言うには小林幸子は大物過ぎたし、それを別としても過去にポケモンソングなどを歌っていて、オタク業界にそこそこ名前が知られていた部分もある。「風といっしょに」は名曲。
そして、小林幸子が以前より「ラスボス」の愛称でネット上で親しまれていたのが大きいのである。……そう言われても困るだろうが、事実だから仕方がない。これはもちろん、小林幸子の紅白でのド派手な衣装のおかげである。ド派手というか、巨大で、ド派手。「まるでRPGのラスボスの様だ!」という感想を、誰からともなく言い出し、全くもってその通りだったので小林幸子に「ラスボス」の愛称が定着してしまった。派手さだけではなく可動したりするところも、「ラスボス」の特別感に似ていてまたさらにしっくり来る。毎年、前年に負けないものを目指して作っていたのか、セットの巨大さがインフレを起こしていて、出演していた最後の方では巨大になり過ぎて本人がどこにいるのか分からないレベルだった。これはこれで右手や左手にもカーソルが出現し、そちらから撃破出来そうで、その仕様もまさにラスボスである。あ、セットではなくこれは「衣装」か。しかし小林幸子は衣装に”乗り込む”らしい。……ま、といった事情で、小林幸子の愛称に「ラスボス」は自然に定着していたのである。
この様な状況で、コメントの書き込めるニコニコ動画に来たというのだからユーザーとしては書き込まざるを得ない。「これは完全にラスボス」、「ラスボスきたー」、ノリはもうお祭り状態である。これだけ有名な人が出てくれるといやがおうにも盛り上がるし、演歌歌手の本気の力でボカロソングを歌ってくれるのは確かに見応えがある。トラブルからこうなった一面もあるが、結果的に新しいエンターテイメンが切り拓かれたと考えると、これはなかなか面白い展開である。
小林幸子はその後もずっとニコニコ動画で活動を続けている。昨今のニコニコ動画の廃れっぷりを見ると、どっちが助けているか分からない状況だが、しかしそう考えるとまるで恩を忘れないかの様にニコニコ動画にネタを提供し続けてくれている小林幸子の存在は、さすが、と言えるのではないか。さすが小林幸子、さすが「ラスボス」である。