「HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP」
出典元、テレビの番組名。かつて毎週月曜日に放送されていたが、現在は不定期に特番として放送されている。
「HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP」は、音楽番組である。司会はダウンタウンの浜田雅功と松本人志。毎回歌手をゲストに呼んで、面白おかしくトークを繰り広げてから歌を披露してもらうという番組構成である。本来テレビ番組で歌手をゲストに招くのなら、そのゲストについて詳しく調べ、いくつかの歌はしっかりと聞き込み、話したい事や聞きたい事をピックアップした上で呼ぶものである。しかし音楽番組はその構造上、一度にたくさんの歌手を呼ぶので、司会がそれら全部を網羅するのには無理がある。そのため大体において、「あの曲が好きなんです!」というスタンスではなく、軽めの雑談と上っ面の曲紹介で、流れ作業の様に行われる。
しかし軽めの雑談とは言っても司会がダウンタウンであるからして、ちょっとしたいじりや痛いところへのつっこみなどは当然ある。テレビ番組に呼ばれるレベルの歌手というのは一定以上のファンを獲得しており、ファンにとってその人らはカリスマ的な存在である。もしそこらの若手芸人に軽いノリでいじられたりしたらファンの気持ちも複雑だろうが、それがダウンタウンなら仕方がない。どんなにミリオンセラーを飛ばした歌手であろうと、まあダウンタウンに言われるなら仕方がない。
……。
……という前提すら必要としない理由を、実はダウンタウンの浜田雅功が持っているのがこの番組の凄いところだったりするのである。浜田は過去に歌手をやっており、「H Jungle with t」というグループのボーカルで、1995年発売の「WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント」というシングル曲は売上200万枚、ダブルミリオンを達成している。90年代のミリオンセラーラッシュにおいても200万枚はとんでもない記録であり、ちょっと絡んでいたというのではなくメインボーカルなのだから誰にも文句は言えない。
もちろんそれは、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった小室哲哉の力を借りていたり、まさにこの「ヘイヘイヘイ」という番組の力をタイアップやサビに借りたものだったりしたが、当時から現在に至るまで音楽というものはプロモーションや政治力を含めての売上である。歴代ヒットソングがあらかたタイアップものな事を考えると、音楽とはそういうもの、いいものを作るのは大前提で、”いかにたくさんの人に聞いてもらえるか”を競うものだと言えるので、そこは別にどうでもいい。
歌手の”力”というのは、敢えて言ってしまえば”売上”である。どんなに熱狂的なファンを持っていようとも、最高で10万枚売れた歌手と最高で100万枚売れた歌手というものには見えない力関係が発生している。……まあ直接それらを言い合ったりもしないだろうし、活動方針の違いもあるので厳密にはそんな単純な話ではないが、つまり第三者から見た時の、分かりやすい指標に売上は使われるだろう。これは今で言う、ユーチューバー(YouTuber)がチャンネル登録者数の差で力関係が発生しているのと似た感じである。「ドラゴンボール」の戦闘力が表示されている様なものなので、これはこれで凄い。
という事はつまり、歌手を番組に招いて「どうぞどうぞ!」とか言ってる浜田の頭の上には「200万」というプラチナ色の見えない王冠が載っている訳で、ゲストの「10万」歌手や「50万」歌手がへこへこしているのも至極真っ当だ、という話になるのである。お笑い芸人の大御所だからへこへこしているのではなく、歌手としてガチで格上だからへこへこしている。そう考えると凄く面白い。