「冷たくておいしい」
出典元、テレビ番組「とんねるずの生でダラダラいかせて!!」より。イチゴを食べたあっくんの感想。
とか言われても訳が分からないと思うが、訳が分からないのが普通と思われる。あっくんは一般人の男の子で、ちょっとした企画に出演しただけの幼児である。その後俳優や芸能人になったとかいう話でもない。あくまで単発で出演した一般人である。そしてその企画はいたずら気味のもので、お子様を少し驚かせちゃおうというものだったが、そんなところでそのお子様の発した素朴な感想がヒットした。
「冷たくておいしい」
イチゴを食べたあっくんの感想である。意味もそのままで、イチゴが冷たくておいしいというもの、そのままなのだが……。あっくんの可愛さ、幼児にしては律儀に理由を添えての感想、使い勝手の良さと口に出して言ってみたい語感、そしてとんねるずの番組という影響力もあり、一時的に大ヒットした。つまりしばらくの間、冷たい物を食べた人が感想としてこれを使う様になってしまったのである。そう考えると冷たい食べ物の感想にならなんでも使える汎用性の高さが素晴らしい。これを言っておけば「あっくんだー」とのリアクションももらえるし、食べた物が不味かったとしてもギャグとして成り立つのでネタとしておいしい。熱々の物を食べて「冷たくておいしい」と言ってしまえば、つっこみ必須のギャグと化す。あっくんが発したのは本当にただの素朴な感想だが、検索すればあっくんが出て来るぐらいは当時の視聴者のハートを掴んだフレーズだった。ここまで短いセリフが、ここまで人々に影響を与えたのである。どこでどんな名言が生まれるか分かったものではない。幼児発、言の葉の魔力である。
敢えてつっこむとすればイチゴのおいしさの理由が「冷たくて」なところだろうか。「甘くておいしい」、「酸っぱくておいしい」ではなく、「冷たくておいしい」なのである。冷たいからおいしいんかい、おいしいかどうかは答えてないんかい、と受け止めてしまいそうになりつつ、あまくておいしいけど冷たくてさらにおいしいって事を略して「冷たくておいしい」なのかな、と考えつつ、幼児の感想になにを無粋な事を、と自制が働いてしまう無駄な思考である。
あっくんが今なにをしているかは分からないが、そもそも元から一般人なのでなにをしていてもいい。しかし「あの人は今」で取り上げられると「おおっ」と見てしまう人がいて、せっかくだからイチゴを食べさせてこのセリフを言ってもらいたい、ぐらいには、当時、知名度があったのは確かである。ただ、その時どんな気持ちでこの感想を言ったのか聞いてみたいと思いつつ、「んなもん覚えてないですよ」がおそらく、正しい返答だと思われるので、”発言した本人がその心を理解していないのをすんなり納得出来る”という、世にも不思議な現象がそこに発生するのだろう。これはこれでなんだか凄い。
本ページの情報は2023年3月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。