「Aだよなあ!」
出典元、テレビ番組「芸能人格付けチェック」にて芸能人がたびたび口にする言葉。影響力のない言葉。
「芸能人格付けチェック」、有名人が安物ワインと高級ワインの味を判断出来るか試したり、安物楽器と高級楽器の善し悪しを判断させたりする面白おかしい番組である。ものはクイズでありながら、従来のクイズ番組と趣を異にし、構造として普段お高くとまっている芸能人を視聴者が笑いものにするという、少し珍しいタイプの番組である。しかしそれも良い具合の味付けがされており、司会のダウンタウン浜田の出演者をいじる加減も上手く、顔を潰すというよりはみんなで恥をかいて楽しむといった感じの、よく出来た番組である。出演する芸能人からしても、敬遠するよりはむしろちょっと出てみたい番組になっているのではないだろうか。
クイズは”芸能人なら分かって当然の問題”の体を取っており、間違いが続くとどんどんランクが落ちて行く。「一流芸能人」から始まり、落ちて行くと「二流芸能人」や「三流芸能人」の格付けになる。そしてそこまでは分かるが、さらに落ちると「そっくりさん」扱いにまでなってしまうからお笑いである。最終的には「映す価値なし」で本当に映してもらえなくなるが、声は届くのでなんとか出演している状態になっている。普段ならさすがにそれは……と言われる様な扱いだが、明らかに自分のミスがその理由なので、どんな大物でも納得せざるを得ない状態になっている。
そしてこの番組内でたびたび発せられる言葉がこの、
「Aだよなあ!」
である。別に「Bだよなあ!」でもいいが。
これはどのタイミングで発せられるかというと、芸能人たちはお題を一人ずつ順番に答えて、Aが正解と思うならA、Bが正解と思うならBの部屋に入っていく。答えた瞬間に結果を教えられる訳ではない。これがこの番組のいい味を出しているのだが、そこで同じ答えに、同じ部屋に辿り着いた人たちは、自然と強烈な仲間意識を持つのである。しかしよく考えれば分かるが、答えた瞬間に正解か不正解かは決まっているのである。その部屋に何人集まっていようが、どれだけみんなが正解と思っていようが、それは結果に全く影響しない。しかし彼らは、「Aだよなあ!」、「Aですよね!」と言い合うのである。まるで共感を得れば正解率が上がるとでも言うかの様に。しかし繰り返すが、正解か不正解かは答えた瞬間に決まっている。Aの部屋の人たちがどれだけ意気投合しようと、盛り上がろうと、人数が増えようと、関係ないのである。
そのシチュエーションがシュールなのと、問題の造りからして「右側に置いてあったやつが高級ワインだよね」などが伝わりにくいせいもあり、彼らの会話は「AだBだ」に収束してしまう。問題のたび何回も言い合っているので、次第に聞く側もゲシュタルト崩壊してきて「エーダエーダ」……この人らはなにを言ってるんだろう、と思い始めてしまうのがまたこの番組の楽しみ方の一つである。……かは知らない。