「天地返し」
出典元、主にラーメン二郎を食べる際に、客が使用する技。秘技・天地返し!
またニッチな用語である。というか既知の用語として紹介していいのか不安になるレベルのものだが、検索するとそれなりに引っ掛かるので一応実在するし、多少は周知もされている技なのだろう。ラーメン二郎がそもそも、東京とせいぜい関東地方までのもので、最近になって地方にも出店され始めたぐらいと考えると狭い地域でしか通用しない話題とも言えるが……。インスパイア系は全国にどのくらい広がっているのだろうか。
ラーメン二郎、もしくは「二郎系」と呼ばれる、どんぶりからヤサイがそびえ立つラーメンを見た事がある人は多いだろう。初見だとネタか一発物だと思うかもしれないが、実際に毎日何百食と提供されているし食べられている実在のラーメンである。たまにこぼれそうになっていて、「もっと大きいどんぶり使えばいいじゃん」というつっこみが入るが、……確かにその通りである。ただし別に少なさをごまかしている訳ではなく、崩れそうになるほどヤサイが積まれた下には、エグい量の麺が水面下に詰まっている。
そしてあんなものどうやって食べるんだよ、の答えの一つがこの「天地返し」である。すなわち、箸とレンゲを使って早いうちに麺とヤサイの位置をひっくり返す。麺はどんぶりの中に敷き詰められているので、最初の状態ではスープに浸かり続けている。そのままにしておくとヤサイを食べて麺に辿り着くまでにスープを吸って麺が伸びてしまうので、その対策としてこの方法が生み出された。もちろん、上からそのままだとしばらくヤサイしか食べられない事への対策でもある。成功するとビジュアルが最初と打って変わって麺一色になる。これはこれで寂しい見た目になるが、麺が伸びてしまう事は回避出来るのであとはご自由にむさぼるがよろし。
ただもちろん、「今、質量保存の法則を無視しなかった?」という一抹の疑問が発生する事も確かで、あれだけ積み上がっていたものをひっくり返したらスープがあふれるんじゃないかというつっこみもあるだろう。……確かにその通りである。ある程度までは麺の重さでヤサイを押し付けられるが、スープが並々と注がれていてヤサイがチョモランマな場合、どうしてもあふれてしまう。そういった時は観念して、まずヤサイをある程度食べてから「天地返し」を発動する事になる。
そしてここまで「天地返し」「天地返し」言って来たが、別にそれをしなくてもいい。そもそも全ての客が「天地返し」をする訳ではないし、レンゲがない店も多い。使える使えないはまた別として、麺が伸びるのも気にせず上から崩して食べるパターンも普通に存在するのである。「天地返し」にならなくても、麺の1/3ぐらいを「よっこいせ」と下から掘り出して上げておき、崩しながら程よくニンニクやヤサイと混ぜて食べていくのも定番である。というかそちらの方が多いと思われる。変に格好いい名前が付いてしまったせいで、新しいおもちゃを手に入れた子どもの様に使って見せびらかしたくなってしまったのが、「天地返し」の特性か。……そもそもこの動き、お好み焼きを焼く時の技と言った方がしっくり来る気がするし。
本ページの情報は2023年3月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。