「流し打ちホームラン」
出典元、野球用語。「流し打ちホームラン」とは、ロマンである。
一般的には「逆方向へのホームラン」、もしくは右打者の場合は「右方向へのホームラン」などとも言われる。もちろん左打者の場合は「左方向へのホームラン」である。ホームランと言えば「引っ張る」、右打者ならレフトへ、左打者ならライトへ打つのがよく見掛けるホームランなのに対し、その逆を行う事により”異質さ”と”尋常でないパワー”を、観る者に感じさせるホームランである。実際のところは引っ張るのと流すのとでどのくらい違うのか、逆方向と言っても打ち方としては引っ張っている事に違いは無いのではないか、距離的にはセンターが一番遠いのではないか、などといろいろな意見があるが、
「ロマン」なので
……、
物理的な話はこの際、関係ない。
満塁ホームラン、サヨナラホームラン、場外ホームラン、熱いシチュエーションはたくさんある野球の華、ホームランであるが、「流し打ちホームラン」の「うおっ!?」感は、また一つ頭の飛び抜けた不思議な魅力を持っている。「ええ~、それ入っちゃうかぁ」というのと、「そのコース、ホームランにしちゃうの?」感が出色のインパクトか。
左打者では、高めの外角の球をレフトに打ち上げて、フライかな? と思ったらそのまま入ってしまう感じが印象深い。カメラワークの影響かもしれない。バットからボールに力が乗り切っている感じがしないのに、違和感と共にスタンドに届いてしまうイメージか。三塁観客席側からのカメラがあればもう少し印象は変わったかもしれない。全盛期の高橋由伸が、しれっとよく打っていたホームランである。
そして右打者である。まずライナー性ホームラン。外角高めの球をライト方向にライナー性ヒットか、でも高めだな、と思ったらそのままライトスタンドに突き刺さるホームラン、これが熱い。ライナー性ホームラン自体がパワーを感じるが、それ入っちゃうと「長打みたいなもんじゃん」なのにホームラン、という無茶苦茶さを感じる。逆方向に入るなら全方向行けるパワーじゃないか。そして、極め付けは
”外角低め”を「流し打ちホームラン」である。
容赦ない。反則である。外角低めといえばストライクゾーンのとりあえず放っておけばストライクになるが打たれても内野ゴロで定番のコースである。それを”あ、そういうの関係ないんで”と打ってしまう人がいるのである。専門用語で「変態打ちホームラン」と言う。かもしれない。全盛期の清原や落合が得意としていたホームランである。外角低めの球を体勢を崩しつつ打ったのにライトスタンドに届いてしまう。しかも、戦慄するのが”振り切っていない”ところである。バットが最後まで振り切られていない。おま、パワーが必要なコースをホームランしてるのに余力残したスイングなんかい、と思わざるを得ない。これがまた熱いのである。
強いて言うなら、清原が打席に立った時に左足が前に出ている感じか。「あっ、狙ってるのか?」である。そして実際、その時の打率は高かった様に感じる。右打者の甘いところに投げてレフトスタンドに運ばれるのは投手にとって後悔が残るところであろうが、外角低めにキチッとコントロールしたのにコンパクトなスイングでライトスタンドに運ばれてはお手上げであろう。観てる側としては「うおおおお!」としか言い様がない。誰もが出来ない技であるのでまさにプロの技、いや、プロの中の天才の芸術技を感じる。
つまり、「流し打ちホームラン」とは、ロマンである。
本ページの情報は2023年3月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。