「大嘘憑き(オールフィクション)」
出典元、原作:西尾維新、作画:暁月あきらの漫画「めだかボックス」に登場するキャラクター、球磨川禊(くまがわ みそぎ)の技。
「チート技」という言葉があるが、数々の特殊能力が登場するこの漫画においても、抜きん出たチート技がこの「大嘘憑き(オールフィクション)」だろう。初め敵として登場する球磨川禊が使う能力で、全てをなかった事に出来る能力である。物事自体をなかった事に出来るため、攻撃を受けてダメージを負ってもなかったことに出来、その気になれば地球がなかった事にも出来るらしい。とんでもない能力である。言葉遊びに定評のある西尾維新が書いているだけの事はあり、「大嘘憑き」、通常なら「大嘘吐き」のところを変形させ、その読みが「オールフィクション」である。能力内容とマッチし、事実をフィクションにするというこの「オールフィクション」という名前自体、かなり格好いい。ちなみに相手の能力自体をなかった事には出来ないのと、「オールフィクション」でなかった事にした事を、またさらになかった事にして戻す事は出来ない。ちょっとした枷だが、しょせんは作者のさじ加減である。
「めだかボックス」は週刊少年ジャンプに連載されていた漫画で、当初は主人公の黒神めだか(くろかみ めだか)が、生徒会長として目安箱であるところの「めだかボックス」に投書された問題を解決していく、という構成だった。初めの10話ぐらいはちゃんとそれをやっていた気がする。しかしまあ人気が出なかったのだろう、テコ入れとして次第にバトルものに展開し、能力もバンバン登場し、あっという間に「能力バトルもの」になってしまった。が、そこから人気が出た。
しかしそれでもそこからさらに人気を加速させたのがこの球磨川禊というキャラクターの登場だろう。あえてなのか、見た目は平凡なキャラクターだが、とにかくイっちゃった言動、弱い勝てない言いつつ絶対に強い能力、全てのセリフに括弧を付けるという思い切った施策と、とんでもない個性のキャラクターだった。ストーリー的にはめだかに負けて生徒会に取り込まれたりするが、実情は”人気が出過ぎたためにとても退場させられなかった”のだろう。実際、人気投票で主人公を差し置いて1位を取っている。そしてサブキャラのくせに能力がどんどん変化したり、バリエーションがあったり、過去に主人公と因縁があったり、もう一人のチートキャラ安心院なじみ(あじむ なじみ、あんしんいんさん)とも深い繋がりがあったりと、まさに裏の主役状態である。
終盤はインフレが酷くなり、「幽☆遊☆白書」を連想させる言葉遊びバトルなど路線の迷走をしていたが、最終的にはバトル漫画としてインフレしきった状態で走り切った。全22巻、目安箱であるところの「めだかボックス」はほぼ最初の10話しか使わなかったにも関わらず、路線変更でここまで生き残るとは、大した粘り腰である。そしてこの人気の立役者が、球磨川禊とその能力「大嘘憑き(オールフィクション)」だった事は間違いないだろう。
『「大嘘憑き(オールフィクション)」!』
『僕の絶命を』
『なかったことにした!』ゾンッ
もうなんでもありだな。
本ページの情報は2023年3月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。