「ハンドパワー」
出典元、マジシャンであるMr.マリックのスキル。ただし、そんなものは無い。
Mr.マリック、マジックをやってテレビに出ていた様な気がするが、いつの間にか「ハンドパワー」の使い手となっていた。当時、超能力が話題になっており、もてはやされ、ブームになっていた。こういう非科学的なものは論争に火が点くと派手に炎上する。ネットがない頃だったのでテレビや雑誌で紹介され、小中学生などの教室はその話題で持ちきりだっただろう。とにかく大ブームだった。
さて、マジシャン、手品師であるMr.マリックであるが、ウィキペディアによると、超能力っぽい手品をよく披露していた。イベントでそれらを披露した際、超能力なのか手品なのか、どっちかで観客で意見が割れ、一触即発の状態になってしまったという。そこでMr.マリックがとっさに言ったのが、
「ハンドパワーです」
だそうで、観客は謎のフレーズに平静を取り戻したらしい。Mr.マリックとしてもどうにかしようと思わず放ったセリフだった様だが、その後それがMr.マリックの代名詞となる。手品なのか超能力なのか聞かれた際は、全て「ハンドパワーです」と答える様にしたらしい。そう言い切られるとそれ以上問い詰められない。なにそれ。
しかし上手いネーミングである。大体のマジックは手を使って行うだろうし、手から何か力が出ているとも取れるし手の力で行っているとも取れる。つっこみは野暮、と言わんばかりのネーミングで、これはこれで超能力に負けず劣らず大いに流行った。「来てます、来てます」からのスプーンぐにゃ、なども、超能力かもしれないがハンドパワー、つまり”強い”手の力で曲げてるだけと言われたら理屈は通っているので納得せざるを得ない。当時スプーン曲げに挑戦した人も多かっただろうが、ハンドパワーはMr.マリックしか持っていなかったので、出来なかっただろう。
という、ふわりとしたものが「ハンドパワー」である。Mr.マリックしか持っていなかったと言ったが、近年、Mr.マリック本人が「そんなものない」とカミングアウトし、多くの視聴者から「だよねーw」の賛同を得た。まあ、ただの、マジック、手品である。Mr.マリックが行った超能力っぽく見せるマジックの名前が「ハンドパワー」だった、というだけの話で、超能力ブームに乗っかってテレビに担ぎ上げられた結果の、苦肉の策だったらしい。「そこで超能力です」と言わなかったのは褒められるところだろう。エンターテイメントとしてはテレビでもイベントでも大いに盛り上がり、真似する人も大量に現れ、論争が勃発したほどなのである。”エンターテイメントとしては”、非常に成功したのではないか。あったと見せかけて、なかったけど、後の世に名前が残るスキルというのも珍しい。声に出して読みたい日本語でもある。英語だが。
「ハンドパワーです」