「しゅざい」
出典元、ここ。漢字で「取材」ではなく、敢えてひらがなでの「しゅざい」である。
テレビでたまに見掛ける、ネットから持って来た画像や映像などを流し「どうです、面白いでしょう?」とやるアレに”もにょる”気持ちを抱く人も多いのではないか。そのテレビ番組の、制作スタッフが映像を探す行為を「しゅざい」と名付ける。……名 付 け る。
これは面白映像だけでなくニュースにも当てはまる。事故や事件が発生し、記者はそこに飛んで行って生の絵が欲しい。しかしいくら早く行ったところで限界はある。その場合、生の映像を持っているのはその時、その場にいた人たちである。スマホの普及により、もはや写真どころか動画の撮影さえ誰もが可能な時代なのである。なので記者は、わざわざ現地に赴いて鮮度の低い映像を撮るのではなく、鮮度の高い映像を持っている一般人を検索して探し出し、その映像を使っていいかその人にコンタクトを取るのである。
それはちゃんとした「取材」と言えるものではなく、ネットで検索して連絡するだけという、ものすごーく楽をして情報を集める「しゅざい」である。
もちろん公共性が高く、たくさんの人に有益な情報ならばそれは必要な行為である。こんな事故があってこんな影響が出ている、だから気を付けてください。絵があった方がいいニュースはたくさんある。なのでそういったみんなの役に立つものに関しては、その「しゅざい」を否定するものではない。が、では公共性は無く娯楽性の高いものはどうなのか。一般人が撮影した、面白映像や興味深い映像を、これは数字になるからといってそのままテレビで公開する行為はなんなのか。これは情報の流れというものに対する根源的なギルティなのではないか。
もらって来る先はネット上、ツイッターやインスタグラムなどである。注目されて話題になっているものは勝手にトレンドなどでピックアップされているし、ちょっと古くても再生数や評価で簡単に見付けられる。それを「どうです、面白いでしょう?」とテレビで流す。簡単でしょうね。まさに「しゅざい」である。「ひらがなでしゅざい」と言ってもいい。人によっては、既に見た事のある映像だったりもするだろう。なにせ既にネットに上がっているのが前提だし、話題になっているというフィルターまで掛かっている。ああこれ、こないだ見たやつだ。ツイッターでいっぱいリツイートされてた、インスタで見た、そしてYouTubeまで進出して来ると、ちょっと待てという気持ちは生まれないだろうか。YouTubeに上がっている動画をテレビで見ている……?
映 像 コ ン テ ン ツ の 作 品 を 別 の 映 像 コ ン テ ン ツ で 紹 介 し て い る。
それもう直接YouTubeで見りゃいいじゃん!
フジテレビの面白かった番組を、「こんな面白い番組がありました!」と日本テレビで放送する様なものだ。それを実際想定すると、そんなの絶対やる訳ないじゃん、という話だが、じゃあテレビでYouTubeの映像を流すのも同じだとは思わないのだろうか。なんというか、プライドはないのだろうか……。YouTubeなんてあんな素人のやってるものとはテレビは違う、と言っていた成れの果てがこれなのか。さらにその、他人の作り上げた映像を持って来てそのまま流しているだけの映像に、テレビのいつもの手法で「続きはCMのあと!」などとやってしまった日には、……なんも言えねぇ。
まあ、それらもみな、結局許可をもらわなければいけないものなので、権利保有者にテレビで流していいかと聞いて
「嫌です」
と言われなければの、話だが。