「2階」
出典元、建物の2階を示す表記。説明に不都合の出るケースがたまにある、デリケートな要素。
家電店などで、ビル全体が一つの店だった場合、1階が駐車場になっているところもあるかと思う。そういう店では、入り口が2階のため、客は階段を上って2階から入店する事になる。2階から5階まであるとして、階層としては4階分あるので「4階あるんだな」と客は認識するが、しかしこれは「1階、2階、3階、4階」ではなく「2階、3階、4階、5階」で4階層という造りである。パッと聞いてなるほど、と理解は出来るだろうが、店内にいる間中、その事を頭に入れておかないといけない、と言われると辟易するかもしれない。いや、辟易というよりは忘れてしまって混乱する、という弊害か。
客が入店してすぐ店員に、テレビのフロアはどこかと聞くとする。店員からは「3階の奥にございます」などと普通に案内される。じゃあ2階分上ったあと、奥に行けばいいのかな、と思うところだが違う。1階が駐車場なので入り口が2階、つまり3階は1階分上がった位置にあるからである。ビルとして正式にそこが3階だからで、たとえ下から数えて2つ目のフロアが3階だったとしても、表記としてはそうなるらしい。表記としてそうなっている以上、店員の説明もそれに準拠する事になる。言うなれば相対座標ではなく絶対座標。
これがズレているという認識の最初ならいいが、これはその店にいる間ずっと覚えていなければならない情報なのである。テレビを色々見て、店員に説明を聞き、その事を忘れた状態でじゃあ次は洗濯機でも見るかな、となり店員に聞いたら「洗濯機なら4階ですね」と言われる。ええと、ここはどこだっけ、入って来て1階分しか上がってないから2階か。4階なら2階分上がればいいのかな、と思うところだがやはり違う。ここは入ってから1階分上がった3階であり、4階はそこから1階上がったところにあるからである。ややこしいわ!
そこに必要なのは「4階です。ここが3階なので一つ上のフロアですね」という説明だろう。そしてそれだけでなく、案内表示にもそういった、込み入った説明表記が必要である。しかしそういう事に考えが及ばない人が多い。たまにそういう細かいところまで説明してある案内板を見た時、「あ、この説明分かりやすい」と思うぐらいには広まっていない。それぐらい分かるだろ、という人もいるかと思うが、それは店員に聞かないでも調べて回れば場所が分かるだろ、という意見に近い。案内は分かりやすいほど良いものだし、ここが混乱しやすいだろうな、と分かっているのにスルーして説明する事ほど罪なものもない。
話は大げさだが「おもてなし」というのはそういう事なのではないか。相手の考えを先回りして、少しでも想定出来る混乱を発生させない。たぶんこの辺りが、「その辺の店の店員」と「一流デパートの店員」との間にある差なのだろう。あと言ってしまえばここで例を出した家電店の店員なんて斜陽産業の住人なのだし、まったりしてないでそういうところにしっかり気を遣わないといけないのだと思う。せっかく家電の性能に精通していてどんな事でも教えてくれる存在なのに、その縄張りたる店内の説明という基本的な事がおざなりで客に不自由を強いてしまうとしたらそれは、なんというか、台無しである。