「うまいもんはカロリーが高いんだよ」
出典元、スパゲッティーのパンチョ、吉祥寺店の”のぼり”より。インターネットで見た。
けだし名言である。
みんな知っている事を敢えてストレートに表現したところ、世の真理を突き過ぎて人々に感銘を与えるフレーズになった、と言えるだろう。ちょっと大げさだが、フレーズがシンプルなだけにそのインパクトの大きさを考えるとやはり名言と言わざるを得ない。そしてそれを”のぼり”に掲げるところに侠気を感じる。商売根性かもしれないが侠気もちゃんと感じる。これを思い付いた人には思わず「グッ!」したいぐらいの感動がある。
これ以外でカロリーを言うと、近いものがあるとしたら油だろうか。「油を使った料理はカロリーが高いんだよ」、そして「油を使った料理はうまいんだよ」、という事になる。周知の事実というより、言われてみればそりゃそうだわ、と、聞いた人が一考してから納得する説得力を持っている。しかしやはり店とのコンビネーションだろう。パンチョが「な!」と肩を叩いて来る感じが”のぼり”から伝わって来る。
パンチョは大盛り系の店である。カロリーを気にして食事をする人々が多い中、店頭のこの”のぼり”を見てしまっては、いつもは頼まない大盛り系メニューを注文してしまう人も多いだろう。なにしろ「な!」と肩を叩かれているのだ。何人かで行ってこの”のぼり”を見てしまったらまず話題になるだろうし、話題になってしまえば「今日は仕方ないデー」になる確率も非常に高い。むしろ普段カロリーを気にしている人の方が、引っ掛かりそうな気がする。人を操る作用のある言葉はもはや呪言である。
また、このパンチョ、「パスタ」ではなく「スパゲッティー」な上に「ナポリタン」の「専門店」なので、客層の男性率も高いだろうし年齢層もやや上のナポリタン世代に偏るだろう。ナポリタン世代はナポリタンの事に関しては他人に負けたくない心理を持っている。こんな店に来て、こんな”のぼり”を見せられたからには、軟弱な注文は決して出来ないだろう。ナポリタンで負ける訳にはいかないのである。メニューはノーマルからトッピング付きの”カロリーが高い”ものまで、ナポリタン専門店だけどその替わりにいろいろなナポリタンがあるぜの店であるが、なにせ免罪符が脳に発行されている。負けたくない気持ちとナポリタンに対して気丈にふるまいたい気持ちが相乗効果となり、カロリーなど気にせず注文は行われるのだろう。
「うまいもんはカロリーが高いんだよ」
後世に残したい珠玉の名言である。