「テナント募集 あと 押切への励ましも募集」
出典元、アニメ「ハイスコアガール」の2話にて、一瞬だけ画面に映り込む看板より。メタネタである。
「ハイスコアガール」は押切蓮介(おしきり れんすけ)による漫画である。90年代のアーケードゲームを中心とした実在のゲームを取り上げ、それを楽しむ主人公とヒロインたちの恋愛ありバトルありの、なんとも形容しがたい漫画である。「ストリートファイターⅡ」や「サムライスピリッツ」など、実在のゲームがそのままの名前で登場し、それをプレイしているさまや登場時の感動など、当時同じ感動を味わった人には何倍も楽しめる要素が盛り込まれている。ジャンルを特定してしまうならラブコメディだが、そのひと言で収まらない異質さのある漫画である。主人公とヒロインたちが魅力的である事も特筆すべき点で、あとはタイトルが素晴らしい。
という訳で人気漫画となり、「このマンガがすごい!」などにも取り上げられ、かなり早いうちにアニメ化が決まったのだが、そこで問題が起きた。著作権侵害でSNKプレイモアに訴えられたのである。……ええええええぇ!?
コミックの最後のページには著作権表記があったし、……まあ表記すれば許可を取ったという訳でもないのだが、そもそもここまで実在のゲームを出しまくっておいて許可を取っていないなどありえない、前提としてありえない、というのが一報を聞いた読者の感想だっただろう。聞いてなかったとか確認してなかったとかそういうレベルではないはずだが……。リアクションとしてはもう「編集者なにやってんの!?」が一番に来るだろう。というか一報の時点で出版しているスクウェア・エニックスが家宅捜索を受けている。大ごとだ……。
結果としては怒られたり謝ったりした上で和解し、漫画の連載も再開され、待望のアニメ化も成った。しかしそれには当然、期間を要した。漫画再開が2年、アニメ化は最初に発表されたのが2013年で実際にこぎ着けたのが2018年なので5年の月日を要している。酷い話である。編集者が確認を怠ったのが原因なのは明白で、読者で原作者を責める人などいなかったが、一応押切蓮介も当事者として裁判所からは怒られたらしく、しばらくの間へこんでいてウンコ製造マシーンになっていると自虐している様子も見られた。これだけ同情の余地のありまくる事件もなかなかないだろう。
そしてついに放送されたアニメに映り込むこの文言である。
「テナント募集 あと 押切への励ましも募集」
テナント募集してんだなって。いや違う。押切蓮介への励ましも募集しているのだ。これを考えたのはアニメの監督かもしれないが、とにかく心中お察しする気持ちは視聴者の中に溢れただろう。しかし作品の空気を損なわない程度の、視聴者の1割も気付かないぐらいの一瞬の表示だったのが、いい味を出している。ギャグ寄りの作品だから出来た事だとも言えるが、それだけ不本意な辛酸を嘗めて来た作者を思えば、励ましたくなる気持ちも湧くだろう。押切蓮介はツイッターをやっているので、メッセージは比較的簡単に送れる。ちなみに問題の起こった当時もツイッターをやっていたが、当然の事ながら毎日の様に更新していたツイートが解決まで
ピタアッ……!!
っと2年間止まっており、問題の重さを噛みしめる事が出来る。