「オオカミ少年」
出典元、イソップ寓話より。嘘ばかり吐いていると本当の事を言っても信用してもらえなくなるという教訓。
「オオカミ少年」。知らない人もいないと思うが、「オオカミが来た」と嘘を吐き周りに迷惑を掛けていた羊飼いの少年が、いざ本当にオオカミが来た時に「オオカミが来た」と言っても誰にも信じてもらえず、羊を食べられてしまう話である。単純明快、因果応報であり、そしてここまで分かりやすい教訓というのもなかなかない。「オオカミ少年」と聞いて「オオカミ」「少年」という全く関係のない単語から、嘘吐きの事を連想させるのはよく考えると凄い。絵本は子どもの頃に読んでもらうものである。
問題なのは、いや、頭が痛くなる様な問題なのが、そんな嘘吐きというものが社会においては少年に限らない、というところである。”小学生みたいな嘘”という表現がある様に、”そんな嘘吐いて信じてもらえると思うのは小学生ぐらいだよね”レベルの嘘がある。「隕石が落ちて道が塞がったので遅刻しました」、「友達に芸能人多いから、あのニュースの真相知ってるよ」みたいな、しょーもない嘘である。小学生の吐く嘘みたいだが、吐くのはいい大人なので、聞く側としてはとても痛い。子どもは歳を取ると大人になる。大人になるにつれて、「あ、こんな嘘バレバレじゃん」と思い、吐かなくなって行くのが普通だが、気付けない人もいるのである。つまりいい歳をした大人が小学生みたいな嘘を吐く。「オオカミ少年」、「オオカミ青年」……。それぐらいなら可愛いものである。
「オオカミ中年」、
「オオカミ老人」、
これらも普通に存在している。大問題である。歳を重ねて、なまじ相手に尊重される、無下に出来ない人物になっているとやっかいである。そんな人が嘘ばかり吐いていたら、そばにいたくない。会社でそんな嘘吐く人いないだろ~、と思う人もいるかもしれないが、別に業務上の話に限った事ではない。ちょっとしたニュースの話題で雑談をしていたら、「俺昔その会社と取引してたから知ってるやつ多いけど、」と始まるのである。そのくらいならいい。ハイレベルになると「俺前にその会社(大企業)いてその仕事仕切ってたけど」とかも平気で言い出す。たまたまニュースになっていたこの大企業、その大企業、あの大企業、どれでもあっという間に過去の実績にしてしまうのである。聞いた側のリアクションとしては「そうだったんですか凄いですね」しかない。付き合いが長いと「あんた一体どれだけ大企業の重役をしてたんだ……」という事になり、それらの話題が全て信用出来なくなる。
知り合ってからの信用の流れで言うと、初めは嘘とも気付かず凄い人なんだと感心し、次第に嘘っぽいと感じる様になり、最終的になにも信じられなくなり、結果、初めの頃に聞かされた内容も全て嘘だと気付いてしまう。困った事に、こういう流れである。どこかのタイミングでその人の事が信じられなくなり、その際、過去にさかのぼって信用を失う。これはなかなかに趣が深い。
面接官などでたくさんの人を見てきて、「目を見れば嘘を吐いているか分かる」と言う人がいるが、過信してはいけない。それは嘘を吐いた本人が嘘と自覚している場合である。高ランク「オオカミ少年」になると、自分の思い付いた嘘経歴を、自分で本当だと思い込んでしまう。本人が嘘の自覚もなく嘘を吐いているので、対人経験豊富な人でも見抜けない。「オオカミ少年」の本領発揮であるが、ただただ迷惑な存在である。
本ページの情報は2023年3月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。