「…まぁ仕方ない」
出典元、松井優征の漫画「暗殺教室」より。不破優月のセリフ。
「暗殺教室」、よくこんな漫画を考え付いたものだと読者はおろか漫画業界関係者からも思われたであろうすごい作品である。すごいというか異質。松井優征は画力がそれほど高くない漫画家で、内容で勝負するタイプなのだが、正にその真骨頂とも言える漫画である。アニメ化からゲーム化、実写映画化と大ヒットした。集英社の力の入れようもあり、それらのキャストもすごかった。大人気作品である。
内容としては先生である「殺せんせー」を、教え子である生徒が暗殺する、暗殺を目指すというとんでもないストーリーだが、詳細は置いとくとして、ポイントはひとクラス全員にキャラクター設定がされており、それぞれスポットライトが当たる点である。もちろん比重の大小はあるのだが、これはなかなか出来る事では無い。設定上あるというだけでなく、しっかりとストーリーに絡んでおり、ヒットして長期連載化した事により結果的に全員に焦点が当たった。しかもクラス自体は落ちこぼれという設定があるのである。全員落ちこぼれではあるのだが、それぞれ得意な部分を持っており、「殺せんせー」がそれを伸ばす教育方針を取って、目的としては「殺せんせー」の暗殺があるにも関わらずその暗殺対象から教育も受けるという、ひと言でまとめられない魅力を持つ漫画だった。
その主人公がE組の一人、潮田渚である。ま、厳密には主人公は「殺せんせー」なのだが、パッと見の主人公は渚くんだろう。身体的特徴、変な髪型。そして、可愛い。
衝撃の連載開始と設定の内容から、当初から話題となっていた「暗殺教室」。週刊少年ジャンプでトップクラスのヒットとなっていたので注目度は半端ない。しかしその中でもキャラ萌えというものがある。松井優征は画力が高い方ではない漫画家ではあるが、それと同時に味のある絵を描く漫画家でもあるのである。連載当初から渚くんは男子の制服を着ていたし、女性口調をしている訳でもないし胸の膨らみもない。しかし中学生なので絵としてはどうとでも言える上に髪型が女の子っぽい。そして可愛い。つまり一部界隈がざわざわしたのである。そこそこ長期間ざわざわした。”まだ男子だと確定していない”。これを専門用語で
「こんな可愛い子が女の子のはずがない」
という。訳が分からない人も多いと思うが分からない人は無理に分かる必要のない用語である。
しかしストーリーは展開し、話は「プール回」に入る。池だったかもしれないが、まあ男子も女子も水着に着替えてプールに入る体育の授業である。そこでしれっと男子の水着でプールに入る渚くんが描かれ、性別は男性と確定する。そこでの2コマである。
中村莉桜「渚… あんた 男なのね」
潮田渚「今さら!?」
不破優月「…まぁ仕方ない」
感想は「…まぁ仕方ない」が正解である。これしかない発言とも言えるし、読者の気持ちを代弁している発言とも言える。そしてこれはメタ発言でもある。発言者がその後もたびたびメタ発言をする不破である事を考えても狙って言わせたのは間違いない、会心の素朴なひと言であっただろう。これまで性別をぼかした描写をしていたのは確かであり、それを話題性の一つにしていたのも確かである。しかしこれ以降、なぜ渚くんがそんな髪型にしていたのかなどが家庭の事情で判明するストーリー展開がある。ここでワンクッション、確定させておこう、しかし女子の可能性もあると思っている読者がいる事は知っている。女子にしてしまうのもまずいし主人公がプールで姿を見せないのもわざとらしい。つまりここで確定させるのがベターなのだ。つまり、
「…まぁ仕方ない」
なのである。
なお、真偽のほどは確かでは無いが、渚くん男子確定に伴い、2chでは【悲報】では無く【嬉報】のスレッドが立ったという。