ていうか何をどう考えたら「大規模侵攻の近界民がボーダー隊員になってる」っていう無茶な発想に至るわけ?
出典元、葦原大介の漫画「ワールドトリガー」第177話より。小南桐絵(こなみ きりえ)のセリフ。
「近界民」は「ネイバー」と読む。
「ワールドトリガー」は、異世界から侵攻してきた謎の敵と、主人公たちが戦うSFバトル漫画である。戦闘にはトリオンという特別な能力を持つ者が選ばれ、そのトリオンを使って刀や銃などで戦いを繰り広げる。ストーリーの柱として異世界からの敵との戦争もあるが、それとは別にボーダーという組織内での「ランク戦」と呼ばれる訓練パートがある。作品全体として、緻密に作り込まれた設定の深さと、団体戦の面白さに定評がある。
物語序盤に発生した、敵国アフトクラトルによる大規模侵攻では、多くの隊員が迎撃に回り、なんとか撃退に成功する。その戦いでヒュースという捕虜を一名獲得。ヒュースはその後、それなりに取り調べは受けつつも、玉狛支部でやや緩い感じの拘束で日々を過ごす。やがて、主人公たち、三雲修(みくも おさむ)の部隊はランク戦での勝ち上がりに壁を感じ始め、戦力増強のためにヒュースを隊員に加える事になる。
……いやいやいや彼は捕虜でしょう、敵でしょう。という話になるが、そこをなんとか強引にやってしまうのが修の凄いところで。ヒュースが実はアフトクラトルから故意に見捨てられた事情や、ボーダー司令との交換条件、そして案外敵バレしていないのでこっそり行ける、などといった要素を色々総合して、なんとか話を通す。そしてヒュースは修の部隊、「玉狛第2」の隊員として正式に加入となった。ヒュースはアフトクラトルの精鋭兵士だったため、この加入により「玉狛第2」は大きな戦力を得たのである。
しかしここで問題が持ち上がる。ヒュースが加入し派手に活躍する戦いを繰り広げたあと、ヒュースが近界民(ネイバー)だという噂がささやかれ始めたのである。もちろんヒュースの加入は極秘であり、玉狛支部のメンバー以外には上層部や一部の隊員しか知らないところなので、バレたはずはないのだが……。とにかく噂が広まってしまうのは問題なので修は司令部に報告に行くと、そこでは既に問題解決の作戦が立案されていた……。一応まあ大丈夫そう、という事で玉狛支部に戻ってきた修と、玉狛支部のメンツとの会話。よかった、なんとか大丈夫そうだ。それにしてもどこが噂の出どころなんだろう? ここで修たちの先輩、小南が発したのが今回のセリフである。
ていうか何をどう考えたら「大規模侵攻の近界民がボーダー隊員になってる」っていう無茶な発想に至るわけ?
ん……。
無茶な発想、まあ確かにそうかもしれない。しかし、しかし。”何をどう考えたら”と言うけどそれは事実だし、小南はそれを知っているのにそう言ってしまえるのはどういう事なのか。まったくもって小南のこのセリフは、この場で発せられるにしては相当”すっとぼけたセリフ”と言わざるを得ないだろう。小南は主人公たちの先輩キャラではあるものの、天然というか”騙されキャラ”で、軽い嘘でよく周りからからかわれている。しかしこのシーンにおいては天然とかそういう次元でなく、真面目な顔して凄い事を言ったものである。無茶な発想もなにも、それマジだしね。
もちろんそこに、ツッコミは入る。宇佐美栞(うさみ しおり)からのこのひと言である。
「いやいや 実際それ当たってるから」