「CD田中」
出典元、ラジオ番組「爆笑問題カーボーイ」のコーナーの一つ。読みはそのまま「しーでぃーたなか」。
「爆笑問題カーボーイ」は、もちろん爆笑問題がパーソナリティーを務めるラジオ番組である。放送は毎週火曜日25時(水曜1時)から2時間。テレビにあれだけ出ている爆笑問題がラジオもそんなにやっているのか、と思う人もいるだろうが、これとは別に日曜日にも番組を持っている。そちらは4時間という長丁場である。よくそれだけ話す事があるもんだ。
よくそれだけ話す事があるもんだ、というテーマはラジオ番組にはつきもので、実際のところよっぽど弁達者でない限りフリートークをひたすら続けるというのはつらいものがある。お笑い芸人は特にそうで、コンスタンスにどっかんどっかん笑わせるトークを長時間続けるのは簡単な事ではない。まあその辺りは、ソロとコンビとで少し違うが……。しかしそこで補助的な役割を担うのがコーナーであり、そして”リスナーからのハガキ”である。今ならメールももちろん含まれる。軽くフリートークをしてからコーナーに突入、色々なテーマでリスナーからもらったメッセージを上手く活用するのがラジオ番組のオーソドックスな構成である。
「CD田中」は、ある曲の一部分をかけて、その歌詞に田中がつっこむというコーナーである。どの曲のどの歌詞に、というのが作為的に切り取られた部分であり、そして田中のつっこみもまた、作為的に切り取られたものから使われる。田中が歌? というのではなく、田中はこのラジオ番組で過去に発言したセリフを、リスナーが探して来て強引にくっつける。田中がそこにいるのにその場でつっこむのではなく、つっこみまでもが用意されたセリフなのである。しかしこれがこのコーナーの肝である。形式としては歌詞へのつっこみだが、つっこみじゃない発言も上手い具合に切り取られ、貼り付けられる。それがまた面白く、面白ければそれでいいのである。
こういうのは例えがないと理解しにくい。ツイッターに「CD田中fan-bot」(@uu22111)があったので、そこからいくつか引用する。一つ目のセリフが歌詞、二つ目のセリフが田中のつっこみである。何度か行き来する場合もある。
【ウルトラマンタロウ/武村太郎】
♪ウルトラの父が来た ウルトラの母が来た そしてタロウがやって来た~
田中「あ! 来ました! 今、TBSの中のセブンイレブンから! 速い!」
【大都会/クリスタルキング】
♪あぁーあぁぁぁーーー!
田中「お前はジャパネットたかたか!(笑)」
【トリセツ/西野カナ】
♪この度はこんな私を選んでくれてどうもありがとう
ご使用の前にこの取扱説明書をよく読んで田中「wやだよw 誰が見んだよそんなもん」
【神田川/かぐや姫】
♪三畳一間の小さな下宿 あなたは私の指先見つめ
田中「スマホいじってんじゃねーよっ!!」
【あなた/小坂明子】
♪もしもわたしが 家を建てたなら
小さな家を 建てたでしょう
大きな窓と 小さなドアと
部屋には古い 暖炉があるのよ田中「知らねーよ、そんなオメーんちの事は!」
……といった具合である。
そもそも、歌詞の一部分を切り取って決め付ける事自体、理不尽な行為なのに加え、それに容赦なくつっこみを入れる事がもう節操を欠いている。しかも作詞した時を考えれば時空を越えたつっこみである。が、これが面白いんだから凄い。このコーナーを考えた人は誇っていいし、別の番組でも真似して欲しいレベルである。ただ多少、音楽業界から睨み付けられるかなぁというのは、想像に難くない。
しかしよく考えたら田中は特になにもしてないな、このコーナー。曲名といつの田中かを読み上げるのは太田で、「何日何時何分頃の田中」とこれはお約束でかなり長々と律儀に読んでいる。そのあと流れるのは用意された曲と、録音された田中の音声である。流れたあとはどっと笑ったり感想を言ったりだけで、まあそれを含めてコーナーでもあるのだが。あ、田中はタイトルコールをしていたか。タイトルコールはいつも投げやりな田中の叫びである。
「CD田中ッ!」