「スゲーッ 爽やかな気分だぜ 新しいパンツをはいたばかりの正月元旦の朝のよーによォ~~~~~~~~ッ」
出典元、荒木飛呂彦の漫画「ジョジョの奇妙な冒険」第4部より。主人公、東方仗助(ひがしかた じょうすけ)のセリフ。
時速60キロでどこまでも追って来る敵スタンド、「ハイウェイ・スター」を何とか撃破したあとの仗助のセリフである。「よォ~~~ッ」というクセの強い言い回しは仗助の口癖なので、そこは気にしなくていい。時速を落としてはならないという、どこかの映画で見た様な制約のある戦いだったが、仲間の協力や機転を利かせた反撃などもあり、ボロボロになりつつも最終的にはしっかりと勝ったバトルだった。敵の本体は仗助のスタンド「クレイジー・ダイヤモンド」の「ドララララ」ラッシュを受けてボコボコにされた上に病院の5階から落ちて外の噴水にぶち込まれる。このやられ方がちょっとギャグアニメっぽく、悪役を退治して一件落着した時の様なスカッとした気分になるというジョジョとしては珍しい幕引きだった。
しかし勝ったその気持ちを元旦に新しいパンツを履いた時の気分に例えるとは個性的にもほどがある。他で聞いた事がない。……ただ、その気持ちは伝わってくるのではないか。例えが独創的過ぎるのに誰もが共感出来るもので、かつ、ヘンテコ過ぎるという事もないその絶妙なラインを攻めるという。何だろう……うん、アイテムはパンツなのに言い回しがオシャレと言ったらいいか。荒木飛呂彦はセンスの塊か。
東方仗助は「ジョジョの奇妙な冒険」第4部の主人公である。4部が始まって初期の頃は、ややキャラ設定が固まるまで迷走があった。しかし固まってからはヤンキーな見た目に反して好青年、むしろややヘタレ、しかしやる時にはやるという、読者の共感を得やすいタイプのキャラクターになった。ひたすら格好良くて、”こいつなら何とかしてくれそう”と思ってしまう第3部主人公の承太郎(じょうたろう)とは好対照である。第4部は第3部の冒険の旅とは違い、杜王町(もりおうちょう)という架空の町を舞台に日常に潜む怪異的なスタンドとの戦いを繰り広げる。戦いに次ぐ戦いというよりは、日常を送りつつ引かれ合ったり送り出されたスタンドと戦うという形を取り、最終的にはラスボスとなる吉良吉影(きら よしかげ)との戦いへと向かっていく。向かっていくと言っても杜王町内での話なので、”見つけ出す”と言った方がいいだろうか。
1部から3部までの、進んで行くストーリータイプから一気にタイプを変えたのが4部だとも言えるが、5部から7部もまあストーリーものなので、4部だけが特殊と言えるかもしれない。初めから終わりまでストーリーが進むという形式ではなかったため、作者の荒木飛呂彦もいつかのインタビューで「4部はまだ描ける話が残っている」という様な事を言っていたが、それが後年、8部となって再び杜王町を舞台にジョジョは描かれる。そしてそれを単純に4部の続きとして描かなかったのがまた、良い味を出している、もしくは非常に濃いものを作り出したのである。そう、単純な続きではなく、多少”混ざっている”。
さてパンツだが、仗助の言う新しいパンツとは新品の事を言うのだろう。濃いジョジョファンの中には、正月元旦の朝には新品のパンツを履いて「スゲーッ 爽やかな気分」を味わう”つわもの”もいるという。別に新品でなくても古びてなければ洗い立てでもいいと思うが、そこがこだわりどころなのだろう。完全再現するには敵をドララララで倒したあとでなければならないが、「クレイジー・ダイヤモンド」を持っていなくても別にシャドーボクシングは出来るので、自分で勝手にドララララ言いながらラッシュすれば、「スゲーッ 爽やかな気分」もある程度は再現出来るかもしれない。
本ページの情報は2023年3月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。