「私がそう言ったか? 見た目に惑わされぬことだな」
出典元、冨樫義博の漫画「HUNTER×HUNTER」より。クラピカのセリフ。
「HUNTER×HUNTER」は、別に連載再開はしていないしその予告もない。大事な事なので最初に言いました。
ヨークシン編、対旅団での一シーンにて。幻影旅団の団長ことクロロを捕らえたクラピカが、車の中でそのクロロに答えて言ったセリフである。物語の進行的にはどうという事もないひと言なのだが、これが一部界隈を非常にざわつかせる事になった。
クラピカ。メインキャラクター4人のうちの一人で、普通に読んでいれば男にしか見えないし、女性を思わせる描写もない。が、見た目が少し中性的なのと、男だと確定される情報がギリギリ”無い”状態なので、女性だったらいいなと思う読者が諦めてくれず、”まだ男だと確定していない”という面倒な状態のキャラである。そのため、性別論争がたびたび巻き起こる。おそらく作者もそれは知った上で面白がっていて、ところどころ、こう描写すれば確定なのにというところで曖昧にしている。そのせいでこの論争が長期に及んでいるのだろう。上半身裸でコミックの表紙を飾っているのに性別が確定していないとか、訳が分からない。
今回のセリフもまた、クラピカの性別論争になかなか踏み込んだものだった。幻影旅団とクラピカたち主人公チームの対峙中の出来事である。幻影旅団にゴンとキルアが捕まってしまったが、レオリオと協力して今度はクラピカがクロロを無力化して捕らえた。これでお互いに人質を持つ状態になり、一旦シーンは分かれる。この作戦でクラピカはホテルの受付の女性に変装していたので、ポニーテールのウィッグにスカート姿と、女装している。まあ、女性だとしたら女装とは言わないが。ここで人質となったクロロから言われたのが、
「鎖野郎が女性だとは思わなかった」
だった。そしてこれに返したのが、ウィッグを取りながらのクラピカのこのセリフである。
「私がそう言ったか? 見た目に惑わされぬことだな」
おおおおお! ……女性ではないと言ったも同然だし、遂に確定か!
……お、お、……お? あれ?
ん? 確定では……、ないか。
つまりこういう、ざわつき方だった。確かにまあ、確定ではない。クラピカが女性の格好をしていて、クロロがそれを見て女性だと思った。それをクラピカが否定した。しかしクラピカが否定したのが”クラピカが女性な事”なのか”女性の格好をしているから女性だと思った事”なのかが判然としない。全体を見れば「女性ではない」と言っているシーンだが、細部を見ると「女性の格好をしていただけだが?」と姿について否定しているだけになっている。なんという際どいやりとり……。これにより「ほら男だ、いや待てよ……」という思考を巡らす読者を凄い勢いで大量生産してしまったのである。冨樫義博、絶対狙ってやってるな。
最近では「鬼滅の刃」完結のとばっちりでトレンドに名前が挙がってしまい、連載再開かと誤解された事故などもある「HUNTER×HUNTER」だが、連載再開の情報は全くない。そろそろ戻って来てくれてもいいのではないか。掲載された最新話の「暗黒大陸編」は、ほぼクラピカが主人公状態である。クラピカの名前がファイナルファンタジー7のクラウドとポケットモンスターのピカチュウから取られたのは有名な話で、連載開始時にその2作が話題になっていてそこから作ったらしい。1997年、23年前の話である。しかし今、クラウドって誰だよと言う人がいないのは、それは最近CMに出ていてよく知っている人が多いからだろう。そしてピカチュウはもはや知らない人がいないレベルの有名キャラであり、あと最近、良く出来たふさふさのCGで名探偵とかやっているのを見た人が多いから、だろう。そう、1997年にブイブイ言わせていたクラ・ピカだが、2020年も大概、フィーバー中なのである。クラピカも早く戻って来てくれ。次の10話のネームは出来てるから、と言って休載に入ったのを、みんな覚えているのだから……。