「当て身投げ」
出典元、対戦格闘ゲーム「餓狼伝説」などに登場するキャラクター、ギース・ハワードの必殺技名。ナイスキャッチ。
ギース・ハワードはSNK格闘ゲームの中でもかなり人気のあるキャラである。悪役で、最初の「餓狼伝説」ではボスキャラだった。エンディングではビルの屋上から落ちて死亡するという衝撃的な最期を迎えるが、まあ生きていた事になり、続編でも登場している。つまりは一度死んでも周りの期待の都合で復活するクラスの人気キャラである。ドリームマッチタイトルである「キング・オブ・ファイターズ」への参戦時も話題になった。
架空の街、サウスタウンの支配者、というかマフィアのボス、金髪西洋人のくせして日本かぶれ、上半身はだけた袴姿と、インパクト抜群のキャラ設定である。ボイスは長らくコング桑田。技名は「烈風拳」(れっぷうけん)や「疾風拳」(しっぷうけん)など漢字名で、それを西洋人がたどたどしい日本語で叫ぶのを日本人がアフレコしているという、声に出して言いたくなるエセ外国人風日本語技名となっている。レップゥケェーン!
そしてギースを代表する技、それが「当て身投げ」である。正確には「上段当て身投げ」と「中段当て身投げ」に別れている。ここでは主に「上段当て身投げ」について取り上げる。必殺技と言ったが、厳密には返し技である。コマンドを入力するとギースが「当て身投げ」の構えに入る。その構えの間に、相手の攻撃が当たるとギースはその攻撃をノーダメージでキャッチし、相手を地面に叩き付けてダメージを与えるのである。
対戦格闘ゲームの主な動きで、ジャンプ大キックから繋がる連続攻撃がある。上級者ほど地上戦を行うが、初心者から中級者辺りまではまずジャンプで飛び込むのが攻撃の導線である。そのジャンプ大キックを「当て身投げ」はキャッチしてしまう。また、突進系の必殺技も大体は上段判定のため、「当て身投げ」の餌食になる。比較的何でもアリである。燃えていようが武器だろうが、必殺技だろうが超必殺技だろうが、「当て身投げ」の判定中はノーダメージで受け流してしまう。いや、地面に叩き付けダメージを与える。だからこそ「当て身”投げ”」なのだ。
ここまで聞くと無敵に思える「当て身投げ」だが、もちろん弱点はある。まず返し技であって攻撃ではないので、先ほどの様にジャンプしてきた相手が大キックをせずに着地して、当て身投げの構えが時間で解けた後に攻撃されるとそのまま食らってしまう。また、上段攻撃以外には無抵抗なため、投げもくらってしまうし、ただの立ちパンチなどの中段、足払いなどの下段攻撃も食らってしまう。ここは対戦格闘ゲームの駆け引きを味わっていただきたいところである。
ちなみにこの「当て身投げ」、ギースの登場により対戦格闘ゲーム界隈では通称「当て身」となり、それから他のキャラにも返し技が増えて来るに従って「当て身」という言葉が一人歩きしてしまうようになった。「当て身」と「受け身」とは違う。「当て身」とは本来、突く、蹴るなどの普通の打撃の事である。現実での意味と、対戦格闘ゲーム界隈での通称が違うものになってしまう事、そしてそれだけ影響力のあった技とキャラクターだった事はなかなかに感慨深いものがある。
と言っても昔話ではない。現在進行形でギース・ハワードも「当て身投げ」も暴れている。最近ではバンダイナムコの「鉄拳7」へのゲスト参戦で話題を呼んでいる。これからも負けようが死のうが若返ろうが弱く調整されようが、ギースはところ構わず暴れ続けてくれるだろう。愛される悪役である。
本ページの情報は2023年3月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。