「ファーストペンギン」
出典元、ビジネス用語。語源としてはペンギンの群れの中から、初めに海に飛び込むペンギンの事。
つまりは勇気あるチャレンジャーの事である。ペンギンは海を泳げるが、海にはサメがいて食べられてしまうかもしれない。しかしエサを取らないといけないので、海には飛び込まなければならない。群れて崖上まで進み、最初の一匹……、一羽が飛び込めば次々と何十羽ものペンギンが飛び込む事にはなるが、その氷山から最初に飛び込む勇者こそがファーストペンギンである。転じて、ビジネスの世界でまだ誰もやっていない事を初めて行う、主にベンチャー企業の社長などに使われる言葉になった。知っていると格好良さが強調されるが、知らないと「は? ペンギン?」となるので使用には注意が必要であったりする。企業名にも使われたりしている様だが、その命名自体が勇気ある挑戦である。が、悲しい事にとっくに複数社あるので、「あっちゃー」感もなくはない。
ただまあ、ペンギンなんてものはしょせんペンギンなので、それほど深く考えてもいないものだと水を差してみたくもなるのである。そもそもペンギンは陸上ではテケテケたどたどしく歩くが、水中では魚の様にスイスイと泳ぐ。そちらが主戦場なのだ。本領を発揮するために、早く水の中に入りたいだろうし、寒いとかそういう事もないだろう。そして崖から飛び込むファーストペンギンと言うが、具体的な状況を考えると群れで大量に崖上に集まっているので後続は前がつかえて飛び込めない。ファーストペンギンになるには初めのうちから前の方にいなくてはならないのである。これはもはや勇気とかでは無く、たまたまだろう。そして崖へ向かう最中にペンギンがそこまで考えているとも思えないし、ペンギンに勇気という感情があるとも思えない。ノリである。
が、ビジネス業界においてはまさに勇気の要る行為である事は間違いない。「これは行ける」と思った業種が、全く鳴かず飛ばずで終わる事も多々あるのである。それを正に、新たな業界をこじ開けるべく飛び込む行為には確かに「ファーストペンギン」の名はふさわしいだろう。しかしさらにひっくり返すと、ビジネスというものは全てが特許を取ったり著作権のあるものでもない。つまり最初に始めてそれなりに成功したからと言って、後続が「あ、それいいな」と巨大資本と共に追いかけて来る場合もあるのである。そしてあっさりファーストペンギンが抜かされ、セカンドペンギン、……という言葉があるかは知らないがそれに業界を席巻されてしまう、という事も往々にしてある。なのでまあ、そういうところは名誉的な意味でファーストペンギンの称号をもらいつつも、業界的には二番手、三番手に落ちつつもリスペクトを受けつつ頑張る事になる。まあ現実は席巻されてしまうと席もなくなってしまうので、ファーストペンギンだろうが潰れてしまう事もあるのだが、それも現実のファーストペンギンに例えると、サメに食べられてしまうリスクというものだろう。……いやちょっと違うか。