「おじゃマップ」行け
出典元、テレビ番組「SMAP×SMAP はじめてのSMAP5人旅スペシャル」より。木村拓哉のひと言。
2013年の放送。
知っての通りSMAPは2016年に解散した。このひと言は、まだ不仲の話もない頃のものである。この「SMAP5人旅」は、5人だけで大坂に放り出してレンタカーに乗せ、行き先を決めるのとか撮影交渉とかみんな本人たちでやってくださいね、という企画だった。一応撮影スタッフは追跡しているが、なにもしてくれない。しかも予告はあったものの出発が5人にとってサプライズ、いきなりだったため、とにかく5人とも戸惑った状態での開始となった。あとやはり、同じグループとはいえ彼らはもう共演も少なく、普段からベタベタしていない。マネージャーもいない状況で5人にされて、それなりに気まずいところもあっただろう。
しかし視聴者からしてみれば当然、SMAPが5人揃っているだけで絵になるしプライベートな掛け合いも観てみたい。一人いれば番組が成り立つぐらいのビッグな存在なのである。さあ始まります、と言われたら「キャー!」である。日本で顔を知らない人などいない、そんな彼らが5人揃っていたら、コンビニに行くだけで大騒ぎにもなる。出川だー、蛭子さんだー、とは格が違うのである。たまたま会えた人はみんなに自慢するだろうし、食事をした店もしばらく話題をかっさらうだろう。
これはその「5人旅」で、5人が序盤に立ち寄ったお好み焼き屋「かく庄」を見付けた時だった。「これじゃねえ?」と言っていたのでおそらくガイドブックを見て調べてはいたのだろうが、予約はしていない。当然、撮影交渉をしなければならない。さて誰が行くか……。有吉とかの散歩番組でよく見掛ける光景だが、ここでじゃあ誰が交渉行く? となるとさすがにSMAPにも年齢による序列がある。こういう仕事は最年少の香取慎吾かな、となるのである。やれと言うのは木村拓哉。そこでこのセリフである。
「おじゃマップ」行け
「慎吾、行け」ではなくここに……、香取慎吾のやっていた番組「おじゃマップ」の名前を出してくれたので、ひと笑いが起こる。店に入って行った香取慎吾は調子に乗って「おじゃマップ」の名前を出して交渉を成立させて来るが、もちろんこの番組は「おじゃマップ」ではないので木村拓哉につっこまれている。しかしそれ全体を見てもネタになるし、……やはりここでは木村拓哉が香取慎吾のやっている番組名を出した事が、大きなポイントだっただろう。木村拓哉は「おじゃマップ」に出ていないのである。
SMAPは大物になりすぎていて、この「SMAP×SMAP」以外は共演がないと言われていた。やはり別々の活動をしていると疎遠になるのか……。この実際のところは分からないが、おそらく、……まあ本当におそらくだが、ファンが思っているよりは多く、彼らは他のメンバーの番組をチェックしていたのではないか。草薙剛と香取慎吾の特に仲の良い二人もあるのだが、そうでなくとも例えばメンバーがドラマに出ていれば観ていたり、週一の番組などはよくチェックしていた……のではないか。というか中居くんはメンバーの番組はかなり観てると言っていた気がする。それは極端だとしても、特に独り身が多いSMAPメンバー、思ったよりずっとほかのメンバーの出てる番組は”一応チェックはしている”のではないか。それを敢えて、外に向かって言わないだけで。それを思わせるのがこの、木村拓哉のひと言だった。
SMAP解散は木村拓哉と香取慎吾の不仲が限界を超えて起こったとも言われている。今この解散後、振り返ってみれば、木村拓哉が香取慎吾の「おじゃマップ」を知っていた、おそらく多少は観ていた。それ一つ取ってみるだけでも微笑ましい。不仲になる前の出来事とはいえ、こうして木村拓哉が香取慎吾に気安く命令している図がとても良い。そしてもちろん香取慎吾も「へいへい」といった感じで応じているのも良い。「5人旅」の中では他のシーンでもこの二人の気安い掛け合いが見て取れる。当たり前だが、元から犬猿の仲だった訳ではないのである。
決別してしまった今、昔は仲が良かったからどうというものでもないが、もし100に一つの可能性でも再結成があるのなら、本人たちが、特に木村拓哉と香取慎吾が、こういった過去の映像を見て昔を懐かしんだ時にその可能性があるのかもしれない。というか別に、正式に再結成をしなくても、単に共演したり、一緒に歌を歌ったりするだけでファンは大喜びだろう。今でさえ「新しい地図」と中居くんの共演は大きなニュースになっている。ここに木村拓哉を加えればいいだけである。今の日本に、もし”物理的には”簡単に、ハッピーなニュースを流せるとしたら、本人たちの心づもり一つでかなり実現性の高い、元SMAPメンバーの共演なのではないか。そんな可能性を選択肢の一つに持っている事自体、彼らが国民的アイドルグループと言われていた大きさを思い知らされる。