「塩はどこも同じだけどタレはその店独自の味なのでタレをおすすめします」
出典元、テレビ番組「吉田類の酒場放浪記」より。串焼き屋の店長さんのセリフ。
「吉田類の酒場放浪記」は、他に類を見ない番組である。類だけに。……。内容は吉田類が実際に営業している居酒屋に入り、多少店員や客と絡みつつも単に酒と料理を楽しむだけというもの。名前が名前なので一応説明すると、吉田類は70前後のもういい歳の男性である。なので居酒屋に似合うと言えば似合う。しかし「で、なにすんの?」と言われれば、ただ酒と料理を楽しむだけである。事前に店に連絡はしてある様だが、入ってからの台本はない。しかしこの、店主と話したり、料理の話をしたりのお決まりでありつつのだらだらとした空気が魅力となり、長年続く人気番組となっている。酒好きには堪らないらしい。これの後追いで真似をしている番組もあるし、YouTuberもたくさんいるが、とにかく先駆けである。
テレビ番組ではあるので、多少ぐだぐだになったり酔い潰れたりしたら編集で切ってあったりするのだろうが、おおむね店にいる人たちには好評で、よく乾杯して回ったりしている。吉田類の人柄もあるのだろう。強引に同席したりせず、ずるずると絡まないのでそこには好感が持てる。実際はカメラに向かって、というかカメラマンに向かって話し掛けている絵となるのだろう。芸能人が同じ店に来ているけどそれほど気にしなくていい、というのはなかなかに貴重なシチュエーションである。ちなみに酒飲み界隈ではかなりの有名人だったりする。
今回のセリフは、とある串焼き屋での会話で放たれた。焼きとんだったかと思うが、吉田類が店主に「塩とタレとどっとがオススメですか?」と聞いた時の店主の回答である。質問自体はよくあるものだと思われる。それに店主は答える。
「塩はどこも同じだけどタレはその店独自の味なのでタレをおすすめします」
なるほど。
……。……あれ!?
ちょっとした違和感。よく聞くのと違う。そうだ。「素材に自信があるのであえて塩だけの味付けでどうぞ」の真逆なんだ。どちらが正しくどちらが間違っているというのではないが……、逆にどちらも説得力があるのが凄いところだ。このタレ推しも、大いに納得の出来る回答である。塩は多少こだわれるかもしれないが、店独自のタレほど凝って作れるはずもない。正に目から鱗である。結局吉田類は、おすすめを聞いた以上はそれを頼まないといけないと法律で決まっているため、いや法律はないが失礼なため、タレを頼んで舌鼓を打った。なんでも決め付けてしまうのは良くない事だと思わせるエピソードだった。