「ね、簡単でしょう?」
出典元、「ボブの絵画教室」より。講師であるボブのセリフ。
元々の意味と別の使われ方をしている事で有名なセリフである。逆の意味で使われる場合はネットスラングとも言える。このセリフは、絵画教室の番組で講師のボブが描き方を説明し、書き終えた後に放ったものである。意味としてはそのままだし、本人もそのままの意味のつもりで言ったのだろうが、視聴者にはそう伝わらなかったおかげでここまで有名になってしまった。
何しろプロの絵描きが、素人の視聴者に向けて絵の描き方を教える番組なのに、とても初心者向けの内容ではないスピードでハイクオリティな絵画が完成させてしまったからである。最初はこう描き出していくんだ、と思って見ているとあれよあれよという間に形になり、気が付くともう仕上げまで済んで、よくあるプロの絵画が完成していた。ここで「ね、簡単でしょう?」と言われたらこちらとしても「ちょ、待っ」としか言いようがない。番組の尺もあるのだろうが、悪く言えば不親切、良く言えばプロの神業披露、そして番組名の付け間違いと人選のミス、であろうか。
そして変な形で有名なセリフになる。ニコニコ動画などで非常に難しい、例えばソフトの使用解説動画や、ニコニコ技術部などの技術者がプロの技でオタク向けのすごいものを作ってしまった際などに使われる。動画作成者がどう思っているかは別として、初心者に分かりにくいほどちょうどいい。ここを、こうして、こうすれば出来るんです、視聴者「???」、動画作成者「ね、簡単でしょう?」。この様な使われ方で、非常に汎用性が高い。
逆にこのセリフが有名になってしまったことで、本当に簡単な事でもネット界隈では「簡単でしょう?」と言えなくなってしまった感もある。それはそれで問題だが、ネットスラングの面白さである「分かる人には分かる」、「伝わる人には伝わる」楽しさ、一体感がそれを上回るので、仕方ないといえば仕方ない。例えば小説や漫画を創作する人が、ストーリーの中でキャラクターに決めゼリフをはかせた際に、それがそのままの意味で格好いいとか怖いとか印象的だとか、ストレートに受け止めてもらう事は比較的簡単である。が、この「ね、簡単でしょう?」の様に逆の意味だったりややずれた使われ方で有名になってしまったりする事を、狙って作ることは中々出来る事ではない。ボブもまた、狙って使った訳ではないので偶然の産物、言葉というものの面白さはこういうところにもあるのだろう。