「カフェラテの、一番小さいサイズでご用意させていただきます」
出典元、不詳。とあるカフェでの、店員のセリフ。
スターバックスコーヒーを筆頭に、おしゃれなカフェはもはや日本中に広まっている。少し高い価格帯のコーヒー、こじゃれた軽食、居心地が良く長居しやすい空間……。まあ、昔ながらの喫茶店とそこまで違うかと言われれば結構被っているところもあるのだが、違いを言うならばやはり、メニューの豊富さと”わけの分からなさ”だろう。いちいち英語で記載してオシャンティーにしてみたり、普通のコーヒーが飲みたいだけなのに探しにくかったりと、利用難易度が高い。普段使わない人にとって、それはいつまでも敷居が高いままの存在だろう。そしてその筆頭、かつ、逃れられないやっかいな要素が、サイズの名前である。
つまり「よく分かんないから普通のブレンドコーヒーでいいや」とか「普通のアイスコーヒーでいいや」という人すら回避出来ないのが店員からの「サイズはどれになさいますか?」の質問である。「S」、「M」、「L」なら普通の人でも予想は付くだろうが、一部のカフェはやっかいな事に、そこにおしゃれ要素をデコレーションしてくる。
スターバックスコーヒーでは、サイズは下から「ショート」、「トール」、「グランデ」、「ベンティ」となる。は?
……「ショート」が「S」だから油断していたらその先は濃霧である。「S」、「T」、「G」、「V」とか、これだから初心者お断りと言われてもしょうがない。霧がこくてあまり前が見えない。タリーズコーヒーは下から「ショート」、「トール」、「グランデ」、「エノルメ」である。は?
……スタバに影響を受けたか与えたか知らないが、前3つが共通している。そんなメジャーな用語なのだろうか。そして最大サイズの「エノルメ」は、ただただ意味が分からない。調べれば分かるのだろうが調べたくもない。その豆知識は脳みそに刻みたくない。それに比べてドトールコーヒーやエクセルシオールカフェは「S」、「M」、「L」表記である。これなら選ぶのも楽だし、ストレスも掛からない。ああ落ち着く。……。
お前は何を言っているんだ
という声が聞こえた気がするので、問題が存在するならそれを溶かしてみよう。つまり、どんなにややこしいサイズ名があったとしても、必ずしもそれを口に出して言わなければいけないルールはないのである。スタバでアイスコーヒーの普通サイズ、「トール」を頼みたければ、「アイスコーヒーの、一番小さいのじゃなくてそれより一つ大きいやつ」と言えばいいのである。いいのである……。ピコーン! トラップカード発動!
「アイスコーヒーのトールサイズですね!」
そこに店員からの強烈なカウンターパンチが炸裂するのが良くない。よろしくない。こうやって客の顔を潰す事により、おしゃれなカフェは順調にそういう店が苦手な客を剪定して行っているのである。血も涙もない話だ。じゃあ店員はなんて返せばいいのか? ……って、はい、国語のテストだったら中学校一年生レベルの問題だろうか。客からの注文、「カフェラテの、この……S? ショット? サイズで」。はい返答は?
「カフェラテの、一番小さいサイズでご用意させていただきます」
ブラボー!