言の葉の魔力

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ヒーローインタビュー

「それは無駄な質問だ」

投稿日:2019年6月20日

カテゴリー「ヒーローインタビュー」

「それは無駄な質問だ」

出典元、リオデジャネイロオリンピックで、体操競技のオレグ・ベルニャエフ選手が、3人のメダリストのいる会見で放ったセリフ。

正確には、記者が内村航平選手に向けてした質問に、割って入って言ったセリフである。「記者の質問に噛みついた」という表現をしている記事もあった。それほど印象深いシーンだったのだろう。

該当の記者からの質問はこうだ。

「ミスター・ウチムラ、あなたは審判に好かれているから良い得点が取れると感じていますか?」

内村航平は劇的な大逆転で、それまでリードしていたオレグ・ベルニャエフ選手に勝ったところである。採点競技の常だが、勝負の判定が審査に委ねられているため、周りから見て”ひいきしているのではないか”と思われる事はよくある。内村は無難な答えをしたが、それに怒ったのがベルニャエフ選手というところがいい。ベルニャエフ選手の発言はこうだ。

「審判も個人のフィーリングは持っているだろうが、スコアに対してはフェアで神聖なもの。航平さんはキャリアの中でいつも高い得点をとっている。それは無駄な質問だ」

ついさっき、取れそうだった金メダルを逃した男のセリフがこれである。そのメダルを持って行った男のために、本気で怒ってくれている。熱い、実に熱いセリフである。勝った人が負けた人への侮辱をたしなめるのとは次元が違う。

ギリギリで負けた、もしかしたら勝っていたかもしれない、いやそう考える事自体ダメなんだ。さすが航平さんだ、素直に認めよう、ここまで競って戦えた事が自分の誇りなんだ。そう思っていたところへ、この記者のぶしつけな質問である。

「それは無駄な質問だ」

確かに無駄な質問だ。聞かなくていい質問だし、勝者へ水を差す質問でもある。そこで自分ではなくベルニャエフ選手が反論してくれたのである。内村航平も嬉しかっただろう。なにせ勝った側なので下手な事は言えない。それに日本人には謙遜の美徳がある。しかし結果が出ている以上、下手に謙遜したら負けた人に失礼だ。こう考えるのが日本人なのである。その、あまり言えない状態に、まさか一番悔しいはずのベルニャエフ選手が応えてくれるとは。勝った内村航平も格好いいが、負けたベルニャエフ選手も非常に格好いい。こんな事、普段からリスペクトしていなかったら言える事ではない。いや、そういう素直な性格の持ち主だったのだろう。

とにかくいち日本人として、言ってくれてありがとう、と伝えたい嬉しいセリフだった。あんた格好いいよ!

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    コトノハ

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