「無双」
出典元、ゲーム用語。もしくはゲーマー用語。
元々あって使われていた意味と、ゲームから広まって新しく定着した意味があり、その二つの意味が遠い様で案外そこまで遠いものでもない、という微妙な距離感にある不思議な用語。これを聞いて新しい意味を連想した人はゲーマーである……、と言いたいところだが、一般にもかなり浸透してしまったのでそうとも言い切れなくなってしまった。
「無双」の元からの意味は「並ぶものがないほどすぐれていること」だが、ゲームから広まった新しい意味は「一人が多人数を蹴散らす」となる。これは厳然とした元ネタが存在していて、コーエーから発売された「真・三國無双」という人気シリーズがそれである。三国志の時代を舞台に、有名な武将が敵を蹴散らしまくるゲームである。超人アクションゲームなので一人で敵の大群に突っ込んで行って余裕で吹き飛ばしまくる。それまでそういうゲームがなかった訳ではないが、有名な三国志の武将でそれをやった事、プレイステーション2の性能を生かした3Dの大群キャラクターと派手なアクション、そしてとにかく簡単で気持ちいい爽快感が受け、滅茶苦茶ヒットした。「真・三國無双」シリーズは現在まで続く人気シリーズとなり、亜種も多数作られている。
そしてその影響で「無双」という言葉がゲーマー間で別の共通認識となる。「真・三國無双」みたいなやつ、つまり「無双」。「真・三國無双」みたいに敵を蹴散らすアクション、それが「無双」、である。転じて、とにかく一人が多人数を相手に活躍するさまをとにかく「無双」、「無双する」と言う様になった。野球でピッチャーが打者をバッタバッタと三振に切って落としても「無双」だし、クイズ番組で一人の出演者が正解しまくりでぶっちぎりで優勝するのも「無双」であり、記者会見で当事者が記者からの質問を論破しまくるのも「無双」である。おそらくこの転じ方の理由の一つには、「真・三國無双」が「戦国無双」や「ガンダム無双」の様に、三国志から離れて別の意味でも展開した影響もあると思われる。しかしとにかく「無双する」は、ゲームだけに限らない用語として広がって行った。これだけ新しく、元の語源も新しい語源もはっきりしているのに、一般にも浸透している用語というのも珍しい。
ちなみにこの、ものすごい人気シリーズとなった「真・三國無双」シリーズだが、なぜ「真」が付いているのかと言うと「真」の付かない「三國無双」というゲームも「真」の前に一作だけ発売されていたからである。「三國無双」は「真・三國無双」とはジャンルも異なり、一対一の対戦格闘ゲームだった。タイトルに「無双」が付いていて、「真・三國無双」の前身のソフトであるにも関わらず、ゲーム内で”無双”をしていないため、このゲームが「無双」の語源だと考える人は居ない。この事実は少し面白い歴史ネタだろう。光栄だけに……!