「そんな装備で大丈夫か?」
出典元、イングニッション……、まあいいや、ゲーム「エルシャダイ」より、ルシフェルのセリフ。これに対する返答は因果律により確定している。
「大丈夫だ、問題ない」
である。
2011年4月に発売されたゲーム「El Shaddai – エルシャダイ -」、プレイしたユーザー数はどのくらいか分からないが、とにかくプロモーションビデオのインパクトがすごかった。まあ、絵がすごいとか、動きがすごいとか、そういうのではなく、いや動画のくせにそういうところではないところが受けてしまった事自体が、すごかったというか。結論としては登場するルシフェルとイーノックのやり取りのシュールさが、謎のブームとなり、ニコニコ動画を中心として流行りに流行ってしまった。ただこれはプロモーションビデオの話であって、ゲームがどれだけ面白かったか、どれだけ売れたかは知らないし関係ない。たぶんあまり売れてない。
シュールギャグとは大真面目にやり切ってこそ大きな効果を発揮する。プロモーションビデオの最初になんだかよく分からないことを言っているルシフェルは、戦いへ向かうイーノックに「そんな装備で大丈夫か?」と聞く。主人公イーノックは、自信満々に「大丈夫だ、問題ない」と答え、戦いへ向かうが、あっという間にやられてしまう。そしてなぜかそこで時間が戻る。時間が戻ったのはゲームだからか、そういうループものだからか、細けぇ事はいいんだよ、かは知らないが、再びルシフェルはイーノックに問いかける。「イーノック、そんな装備で大丈夫か?」と。イーノックは答える。
「一番いいのを頼む」
と。ここまでがテンプレートである。
ルシフェルはなんだか上から語りかける様な位置付けだが、イーノックは真面目そうな主人公である。大真面目に「大丈夫だ、問題ない」と言い切ってしまったのに次はあっさりと「一番いいのを頼む」とこれもまた真顔で頼むものだからシュールさが際立った。この後、ニコニコ動画では「そんな○○で大丈夫か?」、「大丈夫だ、問題ない」のコメントやり取りがものすごく流行ってしまった。こういうものは「エルシャダイ」とは関係ないところでも猛烈に拡散される。またそのノリでネット上でも使われまくり、未来検索ブラジルの「ネット流行語大賞2010」で金賞を取ったらしい。2010って、発売前なんじゃないかそれ……。
まあこれも言葉の突然変異種というものだろう。このブログで言うなら「超対話」の突然変異種である。絶対に狙って作れるものでは無い。そしてこんなシンプルなやり取りなのに一度ここまで流行ってしまうと、ちょっと似た、近いやり取りでも「エルシャダイの真似だ」となってしまうので結局狙って似たものを作る事も出来ない。数年に一度レベルの「掛け合いの発明」だろう。
そして先日、イングニッション……、じゃなくて権利を受け継いだクリム社から、「エルシャダイ」プロモーションビデオのメイン部分の動画や画像がフリー素材として配布される事になった。上で書いたものを含むやり取り全般である。”商用利用も可”らしい。また思い切った事をしたものであるが、どうせこのまま過去の懐かしいネタとなってしまうなら、そうやってまたどこかで使われるのも、クリエイターとしては本望か。続編は、あまり望めない状況の様なので、そういうのもアリかもしれない。こういうのは他の会社も真似してくれていい。