「基本プレイ無料」
出典元、ゲームの課金システムの名前。意味は読んだそのままだが、深い意味はある。
日本のゲーム業界をダメにした悪名高きゲームシステムである。登場した当初、「基本プレイ無料」と聞けば「お、無料でプレイ出来るんだ、ありがたい」と思った人は多かった事だろう。しかし2019年現在、「基本プレイ無料」と聞けば、「ああ、課金しないとガッツリ遊べないえげつないやつね」と受け止める人は多いだろう。間違っていない。えげつないのである。
「基本プレイ無料」のゲームをソーシャルゲームなりブラウザゲームなりで複数プレイした事のある人なら分かるだろう。あの時間経過による行動力やHPの回復、時間を注ぎ込めば注ぎ込むほど強くなる自分のキャラたち。そして重複したキャラはゴミの様に養分にされて行き、とめどなく訪れるイベントの数々とそこでしか手に入らない特別なアイテム。イベントは、期間を設けられているので学生や社会人などは休み時間にしかやれないため、一日中貼り付いていられる人ほど有利である。しかしそのイベントでしか手に入らないアイテムがある、どうしても欲しい。そこで必要になるのが「リアルマネー」である。行動力やHPを一瞬で回復するアイテムが売っているため、それを買って解決して時間的に有利な人たちと争うのである。そのイベントをクリアした人への報酬や、ランキングを設けてその上位の人に配る最高級のアイテムなどがある場合が多い。驚くほどどこも似たり寄ったりな仕組みである。
そして「ガチャ」である。専門用語で”射幸心を煽る”と言うが、あのおもちゃ屋やデパートに置いてあるガチャポンをデジタル化した事で、とんでもない仕組みが完成してしまった。レアリティの高い、強いキャラを手に入れるためにリアルマネーを投入するのだが、”「ガチャ」なので”、ランダムなのである。出るまで何度でも挑戦し、出なかったらまたリアルマネーを投入して出るまで続ける人が続出した。……している。「基本プレイ無料」とは、まず無料で遊ばせてそのゲームにハマらせておき、自分のキャラ、ユニットをもっと強くしたい、もっと強いキャラを手に入れたい、と思わせたところで上述の回復システムと併せてランダムであるところの「ガチャ」で延々とお金を投入させるシステムである。1回300円のガチャを引かせておいて、最高級のキャラの出る確率が0.01%など、ざらである。えげつない。さらにそのガチャ自体も期間限定などにしておき、二度と手に入らないかもしれない、などとなるともう期間内に注ぎ込むしかなくなるのである。えげつない。
えげつなさの最先端を行っていた「コンプリートガチャ」は、さすがに酷すぎたため法律で禁止になった。ガチャで出る全てのキャラを出せば、コンプリート商品としてさらにレアなキャラやアイテムがもらえるシステムで、リアルマネーをどんどん投入する人が後を絶たなくなった。3万円とか4万円とか、10万円とか20万円の話である。これは、あと少しで手に入るのにここでやめたらこれまでの金額が無駄になる、という心理を利用した手法である。さすがに問題があると話題になり、消費者庁が「景品表示法」で禁止されている「カード合わせ」に該当するとして、2012年に禁止になった。しかし「ガチャ」自体も、「基本プレイ無料」の仕組み自体も禁止にされてはいないので、結局のところ”一番えげつないのだけ禁止になった”だけの話である。
日本のゲーム業界をダメにした、と書いたが、大いなる問題はそこである。ここまで徹底的に普及してしまったスマートフォン。ゲーム会社にとってそのプラットフォームはこれまでのゲーム機より大きく、またプレイステーション4などの据え置き機ほどの派手なゲームを求められない、というか作れないため、参入の敷居が非常に下がってしまった。基本テンプレートは先人が創り終えており、そしてこのシステムは非常に儲かるのである。もちろん当たりハズレはあるものの、基本的に据え置き機や携帯ゲーム機向けに売り切りのゲームを作っているより遥かに儲かる。10倍とか50倍とかのレベルでである。そうなって来るとどうなるかというと、往年の名ゲームのシリーズが「基本プレイ無料」のゲームで出て来る事になるのである。そして通常のゲーム機では出なくなる。そりゃあ、儲かる方に出すのが当然である。
さらにゲーム内容も偏って行き、つまり「いかにユーザーに楽しんでもらうか」ではなく、「いかにユーザーに課金させるか」という運営方針になる。基本的に売り切り型のゲームでは無くオンラインゲームの一種なので常に開発し内容を追加し続ける事が必要になるが、それをしてもおつりが来るぐらい、コンシューマーゲームを作るより儲かるのである。もちろんユーザー側も、軽く楽しめればいいやと無課金を貫く人も多いが、総ユーザーの2%でも廃課金ユーザーがいれば成り立つと言われている状態であり、法規制でもない限りまだまだこの無間地獄は続くだろう。