「バリカタ」
出典元、ラーメンの麺の硬さの種類。主にとんこつラーメン系の細麺で使われる用語。
ラーメンは時代と共に味が濃くなっている。
ラーメンは、時代と共に、味が、濃くなっている。
なにがそうさせたのか。そうならざるを得ない食べ物だったのか。しかしおそらく、とんこつラーメンの関東上陸が大きく影響を与えている事だろうと思われる。とんこつラーメン自体の美味しさもさる事ながら、とんこつ醤油というブレンドの革新的美味しさがラーメンマニア、そして一般の人にも受け入れられてしまった事が大きい。家系ラーメンの爆発的普及がそれを証明しているだろう。なぜあの味にほうれん草と海苔があそこまで合うのか、信じられない。しかしいくらなんでも増えすぎなので、これ絶対許可取ってないよね、という「○○家」も氾濫しているが本家はどう思っているのだろうか。
そして天下一品やラーメン二郎、そのインスパイアなど、濃さとカロリーの限度を越えて行け越えて行けというラーメンが登場し、しかもそれがラーメンマニアに受けてしまったことでラーメン好きの「濃さ」への要望がインフレし続ける事態になってしまった。昔ながらの、ラーメンラーメンした醤油味の中華そばが好きな人ももちろんいるが、ラーメンマニア界隈での話題はもはやそこにはない。味噌や塩も、袋ラーメンではしっかりとシェアを保っているが、店で食べるラーメンとしてはとんこつととんこつ醤油に後塵を拝していると言っていいだろう。
そしてとんこつラーメンにおける麺の硬さである。とんこつラーメン以外でも、以前からサービスとして麺の硬さが選べるラーメン屋はあっただろう。しかしとんこつラーメンの店が「必ず聞いてくる」レベルで客に浸透させたおかげで、元は対応してなかった店でも硬さを指定してくる客が増え、それに対応する様にした店舗は増えた事だろう。硬ければ美味しい訳ではないはずなのだが、なぜか硬いほど美味しいという考えが浸透しており、「麺のかたさは?」と聞かれるとなんとなく「かためで」と答えてしまう人が増えている。
常識的には硬さの種類は「やわらかめ」、「普通」、「かため」の3種類である。しかしここでもインフレが発生する。硬い方向のみへのインフレである。「かため」の上は「バリカタ」、その上に「ハリガネ」、さらに上に「粉落とし」まであったりする。店によっては「湯気通し」、「生麺」なんてものもあるらしい。ここまで来るとやったもの勝ちである。スープにくぐらせればいいという発想なのだろうが、歯応えがどこまで行ってしまうのだろう。ゴリ、ゴリッとした食感なら、もはや別の食べ物である。実際に存在している事を考えると、細麺ならではの芸当なのだろうが、ただ、わずかに自己責任の危険さも感じる。
博多ではいつから「バリカタ」があったかは知らないが、「かため」の上に「バリカタ」を作ったその時が、一線を越えた瞬間だったのだろう。功罪あるとも言えるが、敢えて「よくやった」と言いたい。それを超えた先に、これほど広い地平が広がっていたのだから。ラーメン屋という業界はいい意味で伝統を守らないので、本当に進化が著しい。