「チューリップ」
出典元、主に串かつ屋で提供される料理。花ではなく料理の方。
「チューリップ」。どこにでもあるメジャーなメニューという訳ではないが、たまに見掛ける事はある料理だろう。串かつ屋で出されるが、串カツ屋のメインの豚肉ではなく、鶏肉である。鶏の手羽元的な肉を少し加工して骨付きの状態で揚げた料理で、花のチューリップに似た形状になる。そして骨付き肉であり、手に持ってかぶり付くさまはいわゆる”まんが肉”を食べる感じに近くなっていて、つまりそこが重要なポイントである。
”まんが肉”とはロマンである。
古くは「原始人間ギャートルズ」から、新しくは「ワンピース」まで、漫画に登場する美味しそうだけど”なんだかよく分からない骨付き肉”は昔から少年たちのあこがれの食べ物だった。あれを食べたいが、あれは存在しないのである。つまり漫画的表現における肉なだけであって、あれそのものが実在しない。しかしそのため、数多の店が”まんが肉”の再現を試み、多くの試行錯誤を重ね、しかし再現度の微妙なものを作り上げて来た。骨に豚のバラ肉をひたすら巻き付けて再現してみたけど、貼り付けて形にしました感満載で、剥がしながら食べるのこれ? そういうんじゃないんだよなぁ……、だったり、骨の突き出た肉の塊は再現は出来たけど大き過ぎて重いので、お皿に置いてナイフとフォークで食べてくださいね、えぇ……とかである。もっとこう、つかんでガブッとかじりつくとワイルドな味がするやつを……と思うのだが、漫画やアニメの味や食感をもっと再現してくれと言われても困るだろう。しかしそこはロマンなので仕方ない。
といった存在難易度の高い食べ物な”まんが肉”であるが、それがなんとなく再現出来ているのが、この「チューリップ」である。明らかに”骨付き”の”肉”なので、無理矢理合成したものではないためごく自然な形状をしている。また、ものとしては骨付きの鶏の唐揚げなので、普通に美味しい。名前自体も「チューリップ唐揚げ」と呼ばれたりもする。しかし鶏なのでなんとなくイメージが違う部分もあるが、じゃあなんの肉だとイメージ通りかと言われるとそれはマンモスの肉なので存在しないし、そこは少し妥協してもらいたい。小さいおかげで簡単に骨を持ってかぶりつけるので、絵としての再現度はなかなかのものである。あまり有名な食べ物ではないが、”まんが肉”にロマンを感じていた人は、一度探して食べてみるといいだろう。そんなに高いメニューでもない。
実は昔はメジャーな食べ物だったのが、衰退して行ったのが現在らしい。理由はモモムネがメジャーになったとか加工が面倒臭いとかあるらしいが、まあ普通に考えて作る側も食べる側も骨が邪魔なのだろう。骨付き唐揚げと骨無し唐揚げの話なのである。ロマンを感じないのならゴミが増えるだけだ。骨が邪魔だという世間の声を無視する事は、カーネルサンダースにも出来ない。