「シャリ小」
出典元、寿司屋でのサービスの一つ。どこでもやっているという訳でもないが。
「しゃりしょう」と読む。寿司屋でやってくれるところもあるサービスの一つで、寿司の酢飯、シャリを小さめにして握ってくれる。ネタの大きさは変わらない。「シャリ」や「ネタ」は業界用語っぽいところもあるが、「酢飯」「刺身」では伝わりにくいため、一般ピープルも使っていい用語と思っていいだろう。なお「あがり」や「むらさき」は鼻につくし業界用語警察が飛んでくるので気を付けるべき。
寿司とはあの大きさとバランスじゃないか、という意見もあるかもしれないが、お店がやれますよと言っているなら文句を言う話でもない。そして回転寿司ではなく対面式の寿司屋なら特に、目の前で客にお願いされたら職人も断りにくいだろう。それほどの手間でもないし。客としては「シャリ小でお願いします」というよりは「シャリ小って出来ますか?」とまず聞いてみよう。心証は大事である。そしてこれはどこに需要があるかと言うと、口の小さな人に、……ではなくそれほど多く食べられない人に需要がある。これは寿司が主に2貫ずつ提供される料理なところが影響している。
つまり子どもや小食の女性で考えると、例えば8貫でお腹がいっぱいになってしまう人なら4種類しか食べられない。そう考えると結構寂しい話である。しかし回転寿司は主にそうだし、高級寿司まで行かなくてもちょっとした”回らない寿司屋”でも一つマグロなりを頼んでも2貫で提供される店は多い。1貫が無理な訳でもないだろうが、作る手間的にやはり1貫1貫バラバラに作っていると大変なのだろう。2貫を一度に作れるのは手数をかなり抑えられる事は素人目にも想像が付く。そしてそこで「たくさんの種類を食べたい」という要望への対応策が、1貫の満腹度を少しでも低く抑える「シャリ小」なのである。なお、値段が安くなるという事はない。
安くならないのならつまり、出来るだけ多く食べてもらってシャリの消費も抑えられるという事で、店側にも利点がある。普通にその日一日全部がシャリ小になったら、売上が1.5倍ぐらいになりそうな話である。という訳で最近では回転寿司店のタッチパネル注文の普及により、その選択肢のボタンを設けているところも出て来ている。まあ、あれは単に小食の客が回ってるのにいちいち「これをシャリ小で」とお願いしまくり、さすがに嫌になって対応した可能性もあるが。回転寿司屋の職人が「それ回ってますよ!」と言わないで我慢しているのは本当に偉い。……それはともかく。
しかし小食な人でなくても、なにげにこれは面白い要素だったりするのである。つまり誰であっても、食べるシャリの総量が減るので、食べられる貫数が多くなる。なのでたくさんの種類が食べられる。これこそ寿司屋の、敢えて言えば回転寿司の醍醐味である。さらに言えばシャリはご飯でネタはおかずな訳で、メインたる海鮮部分を食べる割合が増えてお得な気分になる。ちょっとこれは、これまでやった事のない人も、挑戦してみたい食べ方なのではないだろうか。いちいち頼んで職人に嫌な顔をされるのははばかられるが、ボタンのある店でならやりやすい。そう、シャリ小は相対的に考えると、「ネタ大(ねただい)」とも言えるのだから。