「お好み焼き風」
出典元、石田スイの漫画「東京喰種:re」にて、話題にのみ上がる料理の名前。発言者は米林才子(よねばやし さいこ)。
「東京喰種」(とうきょうぐーる)は週刊ヤングジャンプで連載されていた漫画で、一度終了したあと「東京喰種:re」という名前で続編が描かれた作品である。その「東京喰種:re」も既に完結している。当時全盛期と呼ばれるほど強力な連載陣を抱えていたヤングジャンプにおいても「東京喰種」はトップクラスの人気を誇っており、一度終了した時に読者に与えた衝撃は非常に大きなものだった。なにせ、クライマックスの最終決戦で主人公は負けてしまい、生死も不明、大きな謎も残ったまま、世界の行く末もなにも見えないままに突然終わってしまったのである。ここで終わる……の? あまりにも、投げっぱなしでは――。
しかし少しの間を挟み、続編「東京喰種:re」が始まってくれた事でファンは胸をなで下ろす。ちゃんとした続きである。前作から2年ほど経っていて、主人公の金木研(かねき けん)っぽい人が登場しているものの名前が違っており、いまいち”こいつ本当に金木君か?”という状態でしばらく続くという、読者がリアクションに困る期間が長かった。新しい要素や新キャラが多数登場しており、初めのうちは導入と状況の説明を”新作の様に”しっかり描いていたのだろう。金木君っぽい人こと佐々木琲世(ささき はいせ)は、自分の所属するチームのメンバーと一緒に、シャトーと呼ばれる邸宅で共同生活を送っており、初めの頃は比較的ほのぼのとしたエピソードも多く描かれた。
今回のセリフはそのシャトーで、料理担当であるハイセがいなかった時のエピソードである。その時いたのはサイコと不知吟士(しらず ぎんし)の二人だけで、二人とも料理が出来ない。またカップラーメンか……。しかしここでサイコが言うのである。
才子 簡単なものなら作れるアルよ 「お好み焼き風」とか
なるほど。……。なるほど? え?
お好み焼き”風”のなんだよ
ノータイムでシラズのツッコミが入るのである。「お好み焼き”風”」とは。しかしシーンはそこで切られてしまうので、謎のまま話は終わる。
こんな端っこのエピソードにまで味を出して来るとは、この作品も悪(ワル)よのぉ。才子が自堕落な女子である点と、”まあ、ちょっとした料理なら出来るかな、本当にちょっとした”という読者のイメージが合致しすぎている。どんな料理なのかは謎だが……。
しかし予想する事は出来るのではないか。お好み焼きと言えば粉物の王様だが、特徴的なのは味付けである。あの味付けを別の食べ物に施してみれば、それは「お好み焼き風」の”なにか”になるのではないか。例えば白いご飯にソースとマヨネーズ、かつお節と青のりをかけて紅ショウガを添えれば、それは「お好み焼き丼ぶり」と言えるのではないか。……いや違う。本体がない。「お好み焼き風・丼ぶり」か。しかし調味料のみというのはさすがに強烈すぎるかもしれない。
「お好み焼き風」でレシピを検索してみるとそこそこヒットするので、それを参考にしてみる。まずヒットするのはオムレツで、普通のオムレツならケチャップで味付けするところ、先ほどの調味料セットで味付けしている。しかしオムを巻くのはスキルの要るところで、料理が出来ないと公言している人に求めていいスキルではないだろう。ほかにもハンバーグだったり焼きうどんだったりがヒットするが、どれも”ザ・料理”なので難しいところである。可能性があるとしたらサラダで、キャベツの千切りだけしてお好み焼きの調味料セットをかければ、なかなか美味しいサラダになってくれる。しかし「ご飯作るよ」でサラダは厳しいか。
では、食パンを焼いてそこに調味料セットでは……、どうだろう。あー、こんなところか。あの味は、パンなら合わない事もない。そして食パンを焼くぐらいならサイコにも出来るだろうし、最悪焼かなくてもいいのだから……。ソースマヨネーズの味は強烈であり、がっつりかけてしまえば土台の味は置いといてすべてその味が持って行ってしまう。しかしそれが美味しくない”訳ではない”のがありがたいところであり、困ったところでもある。そしてこういう話をしていると段々口の中がソースマヨネーズモードになってしまうのも、……困った話である。