「一目で義理とわかるチョコ」
出典元、チョコレート菓子「ブラックサンダー」のキャッチコピー。男気を感じるキャッチコピーだが買うのは女性である。
バレンタインデーである。シンプルに想いの男性にチョコを贈る女性はまあドキドキしながら頑張ってくれればいいのだが、問題は「義理チョコ」である。さすがに規模は恵方巻きどころではない。これだけ浸透してしまうとスルーも難しく、毎年この時期はどうしようかと悩む女性が増える事だろう、義理チョコを。そこでまあ簡単なところではチロルチョコである。しかも関係各者にもれなく配る。目立つ様に。この手は学校でも会社でも使えるだろう。もらった方がありがたいが、一目で義理と分かる。が、やはりありがたい。あげる方もギリギリの責務は果たしつつ、間違えても本気だと思われる事のないいい落としどころである。
つまりその位置に殴り込みを掛けるのが今回の「ブラックサンダー」のキャッチコピーという訳だ。別に小さなチョコならチロルチョコでなくても要件は満たせる。なのでブラックサンダーでもいいではないか。その背を押すべく、キャッチコピーで自虐してまでの渾身の体を張ったギャグである。いやしかしブラックサンダーの元々の立ち位置からして義理チョコに使われる事に皆の感想が「確かに。」になる可能性も高く、よく考えればそれほどダメージを受けない様な気もするし上手い事考えたな、とも思わせる名コピーである。この時期だけパッケージにも書いてしまう手もあるかと思うが、それはそれでやり過ぎかもしれないので、知っている人だけがニヤリとするこのぐらいがちょうどいいのかもしれない。チロルチョコよりは少し高いし、とにかく上手い。
さて、学校に目を向けると、校内で禁止しているところは別として、バレンタインデーは男女とも一大イベントだろう。人気者の男子は泰然としていればいいが、目立たない男子はもらえるかもらえないかが最重要ポイントである。0個と1個との間にはウラル山脈より高い壁がそびえ立っているのである。そしてそこに登場する女神、こと”クラス全員に義理チョコを配る女子”。女神である。控えめに言っても女神である。義理チョコなんて事は分かっている。もらえるかもらえないかが一番重要なのである。こんなにありがたい事はない。そしてもらったブラックサンダー。今年はお母さんからだけじゃなかった、それだけでしばらくハッピーだろう。その女子がただの社交辞令とかノリとか、八方美人で見栄を張っているだけだったとしても、もらった地味男子からしては宝物である。そこにチロルチョコであるとかブラックサンダーであるとかの違いはない。その女子が彼氏持ちだったとしても、それも関係ない。強引に例えるなら、ドラクエで言えばベホマラー、ファイナルファンタジーで言うならケアルガをクラス中に掛けた様なものである。リアル回復魔法の使い手と言っても過言ではない。そういう行為を疎む女子もいるだろうが、その何倍もヒーリングしている男子がいると考えると、やる価値を見い出せるかもしれない。
そして今日、ばらまきブラックサンダーをもらった男子は、「誰か女の子からチョコもらったの?」と聞かれたら答えればいい。「うん、もらったよ」と、シンプルに。