「世界は、ひとつずつ変えることができる。」
出典元、富士フイルムのキャッチコピー。企業イメージと非常にマッチしたキャッチコピーである。
富士フイルムと言えば、一般人がすぐ思い浮かべるのは「写ルンです」だろう。年末付近になると大量投入されるCMが恒例だ。別に写真に季節など存在しない気もするが、年始に親戚が集まる環境などではまあ必要なのだろう。……だったのだろう。もちろん「写ルンです」はインスタントカメラなので、買えばすぐ使えるが、現像には写真屋へ持って行く必要があるし、まあ、当然の話だが今はケータイのカメラがある。ガラケー時代を超えて、スマホもこれだけ普及して来るとデジカメですら存在価値を失ってくる。今どき「写ルンです」が必要だ、という状況は相当稀だろう。しかし販売は続いている。
そして富士フイルム自体も、CMが流れている様にまだまだ元気にやっている。カメラ屋がカメラが売れなくなった時代にどうしてやっていけるんだ、という気もするが、単純な話、持っていた技術を様々は方面に活用し、多方面に展開して行っているのである。
「世界は、ひとつずつ変えることができる。」
世界も変えることができるし、業務内容だって、変えることができる証左だろう。パソコンの普及により失われる職業がこれだけあるとか、AIの普及により失われる職業がこれだけあるとか、散々言われている。要らなくなったなら、なくなればいいと思う。特に今の時代、パソコンで1分で済む作業を手作業で3時間も4時間も掛けて行っていたとしたら、それは企業としての怠慢である。しかし官公庁にはまだまだ多いだろう。パソコンを使うなら15分に一回休憩を、みたいな話である。技術革新は進んでいるし、時代は進んでいるのだ。取り残されたくなければ追い付いていくしかない。特に日本の様な技術立国で、単純作業だけやっていれば効率が悪くても給料がもらえて、年功序列で定年退職、そんな時代は終わったのだろう。いつまでも非効率でも楽な作業をしていたいのなら、それを許す環境を自分で作るか、それこそそういう会社を自分で作るしかない。そんな労力が払えるならパソコンの一つも使える様に努力するべきだろう。
富士フイルムは「写ルンです」及びカメラ事業が売れなくなってから、その事業を縮小し、新しい分野へ展開して行ったのだという。もちろんフイルム技術というのは精巧で、他の分野でも役立つところもあっただろう。しかしそこは他業種、最初に飛び込む勇気は相当必要だったと思われる。では、そこで時代にすり潰される様に消えて行ってしまっていいのか、そんなはずは無い。従業員も多数いるし、培ってきた技術も歴史もあるのである。そして人と技術さえあれば、仕事は変えることができる。つまりそういう事なのだろう。
ひとつずつでも、仕事は変えることができる。
そして富士フイルムは、現在フイルム事業は5%ほどまで縮小し、他業種でCMを出すほどの成果を上げている。もちろん最先端技術を持っていたからこその転身だとは思うが、ケータイにカメラが付くという予想外かつ急展開の時代の波に飲まれつつも、姿を変えながら生き延び続ける富士フイルム。このキャッチフレーズに、富士フイルムのプライドをとても深く感じ、尊敬の念を禁じ得ない。
本ページの情報は2023年3月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。