「安いクセして。」
出典元、スーパーマーケットチェーン、西友の現在のキャッチコピー。安いクセして新鮮だったり、ちゃんと美味しかったり。
西友と言えば、ちょっと前までは「このスーパー、大丈夫かな……」の代表格だった様な崖っぷち経営のお店だった。客が全然入っていない。そして商品の方向性もよく分からない。高いんだか、安いんだか。高級志向なんだか、そうでもないんだか。少なくともブランド価値は感じない位置に存在していた、と思う。平日の昼間、食品販売エリア以外は仕方ないとはいえ、ガランガランに空いていて店員も暇そうにしていて、客より店員が多い。こりゃもうダメかな……、と思ったのも
今は昔である。
細かいところはいろいろな事情があったのだろうが、消費者にも分かりやすい変化があったのがウォルマートグループの傘下に入ってからだろう。とにかく安さの追求に舵を切って来た。思い切った施策である。みんな知らないと思うが、実は安くするだけで消費者は喜ぶ。特に食品が他の店と比べてまず最安値を常態化させて来ると、ド安定という事で家計を預かる主婦が集まるのである。家電店では無いが「他店より1円でも高かったら安くします」みたいな荒技も繰り出し、とにかく安さで勝負をかけて来た。もちろんウォルマートグループの後ろ盾あってのものだったろうが、これが大成功、みんな大喜びの家の近くにあって欲しいスーパーマーケットの出来上がりである。最初は急激な変化にやや荒削りなところもあったが、次第にこなれてきた様で、安いながらもしっかりとした商品、しっかりとした品揃え、しっかりとした客対応、と西友はこういうものだ、という位置を確立して来た。
「安いクセして。」
そして攻めるキャッチコピー。うちは安いのに、いや「安いクセして」新鮮ですよ、美味しいですよ、安心ですよ、安全ですよ、そう言っている。もちろん自虐の一種であるが、自信に裏打ちされた自虐と言っていいだろう。ある種のギャグにもなっているので、失笑と共に消費者に受け入れられるタイプの高等ギャグだろう。こういうものは担当が思い付いても、なかなか企画として通りにくいキャッチコピーだとは思うが、それを通してしまうのが今の西友の勢いと上層部だ、と考えれば納得が行く。西友のクセしてなかなかやりおる。
問題があるとすれば、「安いクセして。」を連呼するCMが、連呼する割りにもう3回目ぐらいでゲシュタルト崩壊してしまい、「クセしてってどう意味だっけ?」となってしまう事だろうか。まあ、人によるか。