「高校では終われない、君へ。」
出典元、漫画家井上雄彦の設立したプロジェクト、「スラムダンク奨学金」のキャッチコピー。
もうこの時点でぐっとくるものがある、キャッチコピーである。
高校の運動部系部活動。多くの漫画で使われる設定だが、ほとんどの場合、主人公は1年生で、3年生は3年の夏大会か秋大会を最後に部活を辞めていく。もう大きな大会もないしやりきったので、受験勉強に専念するというパターンが多い。もちろん大学に行ってからも続ける、という人もいるが、この時点でそのスポーツから足を洗うと決めている人も多い。それを聞いた現役の主人公たちが、少し寂しい気持ちになるシーンだが、現実を見てるんだな、と思わされるシーンでもある。そもそもマイナースポーツだと、大学に部が存在しない事も多いので仕方のない部分もある。
が。
その人それぞれによって、終わり方というものがある。それこそ全国大会で優勝を争うようなトップレベルのプレイヤーが、最後の最後、ギリギリのところで優勝出来なかった、これまでずっと、それこそ小学生の頃からほとんど全ての時間を注ぎ込んで練習してきたのに、トップの栄光は得られなかった。そんな人が、「高校では終われない」、そう思う気持ちは強いだろう。そもそもスポーツはプロに限らなければ適当に人を集めてコートを借りて、やろうと思えばいつまでも出来るのである。しかしトップレベルのプレイヤーだったからこそ、妥協した環境で遊びの延長の様なプレイはしたくないし、プロへの道も諦められないだろう。しかし大学へ行くには資金的に難しい生徒がいるのも確かである。
「高校では終われない、君へ。」
これほど分かりやすいキャッチコピーがあるだろうか。そして心にズシンと来る。プロジェクト名は「スラムダンク奨学金」、設立者はスラムダンク作者の井上雄彦氏である。バスケをやっていて「スラムダンク」を読んだ事のない人はいないだろう。もうそれだけで主旨が分かる。高校でのプレイヤー生活は終わってしまった。大学へは行けそうもない、でも自分にはバスケしかない、じゃあどうすればいいんだ。そういう人へ向けての、奇跡的なチャンスである。
内容はバスケットボールの本場、アメリカへの留学。もちろん色々と条件はあるが、とにかく設立の裏には井上雄彦氏の、
「この作品をここまで愛してくれた読者とバスケットボールというスポーツに、何かの形で恩返しがしたい」
という志がある。
日本では、バスケのプロリーグが作られるまでにもかなりの苦労の積み重ねがあったが、それも日本国内の話である。体格差もあり、オリンピックなどの世界大会となるとなかなか上位に行ける状況ではない。そこで必要なのが、本場アメリカNBAでの経験であり、そこへ行ける可能性のあるスクールへの留学である。もちろん、年齢的なものもある。安西先生も流川に言っていた。
「とりあえず… 君は日本一の高校生になりなさい」
高校までバスケに費やしてきたトッププレイヤーを、すぐにそのアメリカのスクールに送り込むのが最適だろう。それが「スラムダンク奨学金」である。計画も本気だし理念もこもっている。なにより、「ここで終われない!」と強く思っているプレイヤーには胸の熱くなるありがたい存在だろう。行ってからは本人次第だが、背中を押してくれただけでなく費用も負担してくれた人たちの期待に応えるべく、力の限り全力で挑戦するに違いない。