「これが有名な夜市か。のぞいていこうじゃないか。これは……、無傷では帰れんなぁ」
出典元、ドラマ「孤独のグルメ Season5」の5話より。主人公、井の頭五郎(いのがしら ごろう)の心の声。
「孤独のグルメ」は原作・久住昌之、作画・谷口ジローの漫画で、かなり昔に1巻が出た漫画である。中年のおっさんが普通の定食屋などで外食をするだけという、オリジナリティがあるにも程があるだろうという珍しい漫画だった。名前に「グルメ」と付いているが、高級店にはほぼ行かないし食べ物に対するうんちくもほとんどない。基本的にうまいうまい言っているだけというとんでもない漫画である。しかしこれがまた、セリフ回しや飲食風景など、じわじわとクセになる雰囲気を醸し出していて、1巻だけ出た漫画としてはかなり話題になり、長年に渡り売れ続け、ベストセラーになった。現在の出過ぎなグルメ漫画ブームの火付け役になったと言っても過言ではないだろう。伝説の漫画である。最近になって2巻も出た。
そしてドラマ化もされた。されたというか、今回のセリフが「Season5」からという事からも分かる通り、ドラマも延々と続くぐらいの人気シリーズとなった。漫画のドラマ化という事で最初は心配される声もあったが、主演の松重豊の演技や食べっぷり、酒飲み担当でちょろっと出て来る原作者の公認感、クセになる個性的な音楽、そして原作に準拠した「一話完結型」が全てマッチして、誰からも文句の出ない人気シリーズとなった。深夜帯での放送が多い事もあって、「飯テロ」として毎度放送時はネット上が盛り上がる。素人目に見ても、ストーリーものではないし、店はいくらでもあるし、食べるところを見せるだけで視聴者が喜ぶしで、終わる理由がなく、いくらでも続けられるだろう。
今回のセリフは主人公の井の頭五郎が台湾に出張した際のものである。セリフというか心の声だが。ドラマは本当に松重豊のキャラクターと、原作者がどのくらい口を出しているか分からないが「これはこれでいい味を出している」を地で行くセリフ回しで、原作漫画とは違った魅力がある。そしてまた、独自の言い回しを含め、いぶし銀の技が光るのである。セリフはシリーズを追うごとに攻めて来ている様に感じられる。
「これが有名な夜市か。のぞいていこうじゃないか。これは……、無傷では帰れんなぁ」
こんなの、ニヤリとしちゃうに決まってるじゃないか!