「プール冷えてます」
出典元、遊園地「としまえん」のキャッチコピーより。作はコピーライターの岡田直也氏。
「冷えてます」と言われて嬉しいのはスイカやビールだが、暑い夏にはプールだって冷えていて欲しい。……か? いや、どんなに暑くてもがっつり冷やしてもらわれるとさすがに寒い。暑い時に入りたくなるのは確かだが、キンキンには冷えてやがらなくていいのがプールである。「としまえん」は遊園地としても有名だが、巨大なプールがある事にも定評があり、夏しか入れない巨大なプールにびっしりと、人がゴミの様に敷き詰められている姿は風物詩となっている。
まあしかし、「プール冷えてます」とは、なかなかにキャッチーなのではないか。ビールじゃなくてプールなのね、クスッというやつである。このキャッチコピーを作った岡田直也氏は他にも「としまえん」のキャッチコピーを作っており、
「史上最低の遊園地。TOSHIMAEN」
という、思わずおいおいおいと言ってしまいそうになる、ビックリの自虐キャッチコピーをかました事のある人である。関係者にぶっ飛ばさそうなキャッチコピーだが、まあ、これは4月1日のエイプリルフールネタで、とにかく見た人がビックリするものを狙ったらしい。なかなか話題を集めたそうで、頭に角を生やした関係者も思わず苦笑い、と言ったところか。しかし岡田直也氏はこれも書いている。
「聞いたこともない遊園地だが、わたしは応援します」
やっぱりちゃんと怒られろ。
「としまえん」は、ゲシュタルトが崩壊している人もいると思われるので一応書くと、東京都豊島区にあるから「としまえん」である。最寄り駅は西武豊島線と都営地下鉄大江戸線の、どちらも豊島園駅。「豊島園」(としま-えん)。豊島区という東京23区でもやや地味な区にある遊園地だが、その規模としての存在感や、行った事がない人も花火を良く上げていたので、見える範囲の地域の人になかなか知名度の大きかった遊園地と言えるだろう。
しかし東京都の都市計画の影響やらなにやらで、2020年8月31日をもって閉園となる。開園したのが1926年なので、94年の歴史となる。94年もの年月となると戦争をまたいでいてそれだけで凄いのだが、それよりも94年前は1926年で、元号で言うと大正15年である。大正を一年、昭和と平成を全部またぎ、令和を一年働き続け、100年には届かず94年で閉園。これはなかなかに味わい深い。2020年がコロナの影響でこういう状況になってしまったが、最後の最後は自粛が空けたので開園しており、ギリギリプールも開けたのでそこがせめてもの救いか。
歴史のある名所がなくなるというのはそれだけで寂しいものだが、遊園地で言うとこれが「ディズニーです」とか「ハリウッドです」とかだったらちょっと感想が違ったのではないか。それらなら、ブランドの勢いも落ちたか、ぐらいの感想になっただろうが、それが「豊島です」となるとそれは土地の名前なので、住んでいる人にとってみれば故郷を否定されてしまうかのごとく心にボッカリと穴を空けられたかの様な気分になるだろう。まあ別に公営だった訳でもなく西武グループという営利企業のものなのだが、公共交通機関と紐付いていると公的感が増してしまうのは仕方がない。豊島園駅は「としまえん」閉園後、どうなるのだろうか。たぶん「ハリー・ポッター駅」になる。えっ。
跡地は都が避難地域などにも利用するが、商社を経て米ワーナー・ブラザースが権利を持つらしく、そこに「ハリー・ポッター」のテーマパークが建てられるらしい。えええええ。2023年、開業予定。「としまえん」で働いていた人は、「ワーナー・ブラザース・スタジオツアー東京」で働けばいいね。間は空くけど。思ったよりずっと、金の臭いのする話だった。