「お決まりの頃お伺いします」
出典元、カレーショップ「ココイチ」での店員のお決まりのセリフ。みんなが言うからにはお決まりなのだろう。
別にココイチ以外でも使っているかもしれないが、つまり外食店で、客が席に着きたての際に言うセリフにはいくつかパターンがあるという事である。
まず一つ目。「ご注文はお決まりでしょうか?」とストレートに聞いてしまう。これは確認という意味においては、最も効果的な質問である。しかし人によっては、急かされていると感じてしまう事もあるだろう。そして実際、決まってないけど慌ててメニューを開き、本当はもっとじっくり選びたかったけど店員を待たせるのは悪いのでパッと選んでしまう、というパターンも多い。これは悲劇である。普通に「あ、まだ決まってません」と言い、一度店員を去らせて落ち着いて選ぶのがせっかくの外食で後悔しないためのやり方である。店側としては注文はなるべく早くして欲しいのも分かるが、客を急かして後悔させてしまうというリスクをはらんだ質問であるという事は理解しておいた方がいい。まあ、どれも美味しいよ、と言われればそれまでだが。
二つ目。「ご注文がお決まりになりましたらそちらのボタンでお呼びください」。これは呼び出しボタンのある店限定だが、客にとっては、とてもありがたいシステムである。まず急かされていないので、ゆっくりとメニューを選んで、決まってから店員を呼べばいい。しかも手を挙げたり声を掛けたりせずに、ボタンを押せばいいだけだ。「ガスト」が始めたシステムらしいが、ハイテク面でコストが掛かるとはいえ画期的なシステムである。全ての店が対応しているならこれが一番である。ただ、狭すぎる店でこれがあると店員がすぐそこにいるのにわざわざボタンで呼ぶというちょっとシュールな事になる。ちなみに呼び出しボタンのシステムは、特定の座席をピンポイントで呼べるものとばかり思いがちだが、”この列のどこかが呼んでます”的なざっくりとしたシステムのものもあり、結局「お呼びのお客様~?」と声を掛けられる事になり、そういう店に当たるとちょっと雑さを感じてしょぼーんとする。
三つ目はもちろん、「ご注文がお決まりになりましたらお呼びください」である。呼び出しボタンは無い。店が狭かったり、店員がうろちょろしていればいいが、店が広く、店員がなかなか出てこない場合などは声を張り上げて呼ぶ必要がある。仕方ない問題ではあるのだが、こういう時は給仕係でなくても、厨房の人にでも声を掛ければ給仕に伝えてくれるので、どうにか伝えてしまえばいい。まあ、遠かったり忙しすぎる場合はそれすらも後回しになってしまうので悲喜こもごもであるが……。
そして今回のセリフが四つ目である。「お決まりの頃お伺いします」。呼び出しボタンは無い店が多いのかな? ココイチはただのカレー屋だが、メニューがやたらとたくさんある。さらにカスタマイズの種類も豊富なので、注文を凝りたい人は凝りたいだろう。しかしただのカレーな事も確かなのと、”ただいま売り出し中!”の分かりやすいメニューもど~んと出しているので、「じゃあこれ」と即答する客も多いと思われる。その、両対応の落としどころがこの「お決まりの頃お伺いします」なのだろう。「お決まりの頃お伺いします」と言いつつも、1秒弱ほどの”待ち”がある。気のせいかと思う程度の間である。そのタイミングで「あ、」とでも言えば店員は「お決まりですか?」と聞いてくれるだろう。カレーショップならではかもしれないが、中途半端と言えば中途半端な対応である。悪くもないが良くもない。店員と客の両方に気配の読み合いを強いている。
最後に例外パターン。居酒屋である。「お飲み物だけ先にお伺いします」である。これはかなり強めの強制力のある要請である。女性の比率が高くサワーやカクテルなどに注文が散りそうな場合は「ちょっと選ぶんで」が言えるが、男性だらけのサラリーマン団体の場合は「生4つ!」などと流れで決まってしまう事も多いだろう。生ビールじゃない方が良かった人がいたとしても飲み込まれがちである。日本の悪い風習であるが、生ビールが不味いと言っている訳ではない。そして居酒屋に来て、食べ物はともかく飲み物がさっさと来ないと精神的な意味で暴れ出す人がいるので、これは仕方のない部分なのだろう。いつのもメンツ、とかになって来たら段々と好きなものを注文する様にシフトして行った方がいい。
本ページの情報は2023年3月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。